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  • 2014.12.13

高阪剛が語る『UFC 181.5』ヘビー級2大決戦の見どころ「この2試合の結果次第でヘビー級の勢力分布図が変わりますね」

日本時間1214日(日)に米国アリゾナ州フェニックス USエアウェイズ・センターで開催される『UFC 181.5』。メインイベントは前ヘビー級王者ジュニオール・ドス・サントスが1年2ヶ月ぶりの復帰戦で、ランキング4位のスティーペ・ミオシッチと対戦。されに崖っぷちに立たされたアリスター・オーフレイムが生き残りを懸けて、ステファン・シュトルーブと対戦する。この2大ヘビー級対決の見どころを、TKに語ってもらった。

 

 

 

——UFC 181.5』では、ジュニオール・ドス・サントスvsスティーペ・ミオシッチとアリスター・オーフレイムvsステファン・シュトルーブという、ヘビー級の大物対決が2試合も組まれてますね。高阪さんの大好物な(笑)。

 

高阪 いや、ファンタジックな怪獣バトル好きには、たまらないですよ(笑)。

 

――今日はその2試合の見どころを語っていただきたいんですけど、まず1年2ヶ月ぶりの復帰戦でミオシッチと対戦するドス・サントスをどう見ていますか?

 

高阪 ドス・サントスといえば、アッパー、フックを始めとしたパンチの種類の豊富さと、それによって相手を倒す破壊力が売りの選手ですけど、そのベースとなる部分は変わらないと思うんですよ。ただ、ヴェラスケスに敗れたあとの復帰戦ですから、そこにより磨きをかけて今回戻ってくるんじゃないかと思うんですよね。やっぱり、やっぱり、ドスサントスもチャンピオンに返り咲くために復帰するわけだし、ヴェラスケス相手に負けるまでは圧倒的に強くて、「この人は負けないんじゃないか」って思うくらいの実力者ですからね。

 

——ホント、強すぎて困ったな、というくらいでしたもんね。

 

高阪 あれだけ強烈な打撃を持っているんで、打撃系の選手かと思いきや、じつは柔術もできる選手できるし。

 

――あのアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラの直弟子で、柔術黒帯ですからね。

 

高阪 めったに寝技は出さないですけど、技って困った時に出せるかどうかが、どれだけ自分の身体に植え付けられてるかのバロメーターなんですよ。そしてドス・サントスは、ヴェラスケスとの再戦でマズくなったとき、組み付いてなんとかしようとしたり、寝かされても立ち上がったりしていたんで、それはもう身体に根付いた柔術の動きだと思うんですね。だから、あの強烈な打撃にプラスアルファとして、普段は見せない柔術があるからこそ、立ち技であれだけ大胆に行けるんだと思うんですよね。

 

ミオシッチのバランスとストレートに注目

 

——なるほど。一方、相手のミオシッチも打撃でのし上がってきたヘビー級の新生ですよね。

 

高阪 ミオシッチはパンチのストレートの伸びと、それにプラスした足技が強みの選手ですよね。ミオシッチって、キックボクシング出身でしたっけ?

 

――もともとはレスリングをずっとやっていて、アマチュアボクシングのゴールデングローブを獲得してますね。

 

高阪 なるほど。そこに技術を足したスタイルなんですね。でも、なんで学生時代から、そんなにいくつもできるんですかね? こっちは一つでも大変なのに(笑)。

 

――アメリカって、そういう選手が多いですよね。

 

高阪 そうなんですよ。だから、ちょっと話は逸れますけど、向こうは他のスポーツの選手でも冬場だけレスリングをやってるとか、普通ですからね。だからボクシングとレスリング両方を高いレベルでやっている選手がいたりするんですよ。日本もそういうことが許される風潮に、徐々になっていけばいいなって思うんですよね。

 

――日本の場合だと、シーズンオフはひたすら体力作りだったりすることもありますもんね。ちなみに経歴をあらためて見てみると、ミオシッチは高校・大学と野球、アメフト、レスリング、ボクシングで活躍だそうです。スーパーマンですね(笑)。

 

高阪 それで身長が190cm以上あって(193cm)、リーチも長くてストレートが伸びてくるんですよね。いや、これは強いですよ(笑)。

 

――ロイ・ネルソン、ガブリエル・ゴンザガ、ファビオ・マルドナードを倒して現在3連勝中。その前はデビュー以来11連勝で、シェーン・デルロサリオという、ストライクフォース時代に将来のヘビー級王者と呼ばれていた選手にもKOで勝っていますからね。

 

高阪 ミオシッチはバランスがいいんですよね。ヘビー級になると体重移動だけでも大変なんで、あまり動きが速すぎてもよくないんですよ。自分の動きで勝手に疲れていったりもするんで。だから、自分の身体の重さやトータルのバランスをしっかり把握していることが重要になってくるんです。そんなに速く動けなくても、要所要所で相手の動きを見たり、自分の攻撃を差し込んだり、それができるかどうかが大事なんで。あとは畳み掛けるラッシュ力ですよね。だからミオシッチは、打撃を打つ瞬間だけスイッチ入れるとか、そのへんの身体のコントロールが凄くうまいですよね。

 

――自分の身体を技術を使いこなすのがうまい選手だ、と。

 

高阪 あとミオシッチに関しては、パンチがまっすぐ伸びていくのが大きな強みなんですよ。ヘビー級って単純な話、肉がついてるんで、どうしてもストレートがフックになりがちなんですよ。でも、ミオシッチはストレートをしっかり伸ばせるので、長いリーチを最大限に活かせるんですよね。それで勝ち上がってきてるんで。それでいながら、まだ彼自身、身体の特性だったりとか、それに合った技術を習得している最中だと思うんですよ。だから、ドスサントスよりも経験は浅いかもしれないですけど、もっと伸びしろがある状態で前王者となるというのがおもしろいと思いますね。

 

——ドスサントスをKOするようなことがあれば、一躍、時期挑戦者候補の筆頭に躍り出るでしょうからね。

 

高阪 またヘビー級の図式がひっくり返りますよね。だからお互い、タイトルマッチに近い位置にいる闘いだということを、どこまで理解して挑んでくるのか。両者にとって落とせない一戦ですよね。

 

MMAの能力的にはシュトルーブが上か

 

――で、落とせない試合といえば、もう1試合。アリスター・オーフレイムとステファン・ストルーブですよね。

 

高阪 そうですね。

 

――アリスターは現在、UFC戦績2勝3敗で負け越していて、前回もベン・ロズウェルに1ラウンドTKO負けと崖っぷちですけど。ストルーブもマーク・ハントに日本でKOされて以来の試合で、しかも、復帰戦が一度流れてるんですよね。今年7月の『UFC 174』でマット・ミトリオンと対戦する予定だったのが、試合直前に意識を失って病院に搬送されてるんですよ。

 

高阪 ああ、ありましたね。

 

――だから、26歳という若さながら、本当に第一線で続けられるかどうかの瀬戸際じゃないかとも考えられますよね。

 

高阪 それは本人もわかっているだろうし、ケツに火がついた者同士の試合だから、さっきのドスサントスvsミオシッチと対照的ですよね。これ勝ったらタイトルに近づく試合じゃなく、本当に生き残りを懸けた闘う。しかも、印象的な勝ち方も求められるというね。それがオランダ人同士の同郷対決というのは、トリハダものですね。

 

――アリスターとストルーブを比較すると、いかがですか?

 

高阪 MMAの能力的には、正直言ってシュトルーフのほうが上だと思うんですよ。だけど打撃のやってきた経験値と、実際に打撃で倒してきた実績でいうとアリスターなんですよね。それをお互いに、どう認識して闘うかがひとつのポイントになってくると思うんですよ。

 

攻略法を知られたアリスターがどう闘うか

 

——このところアリスターは逆転KO負けみたいなのが続いていますけど、最近のアリスターをどう見ていますか?

 

高阪 これは正直な話、相手がアリスターの底に気づいちゃったんですよね。どんなに強力な打撃を持っていても、「いま我慢すれば、あとから必ずチャンスが来る」って。(2013年2月の『UFC 156』で対戦した)アントニオ・シウバが最初にそれを証明したんですよ。あのときのシウバって、最初は打撃を凄く警戒してたじゃないですか?

 

——そうですね。ガッチガチに顔面のガードを固めて。

 

高阪 ところがシウバは、実際にパンチをもらってみて、またアリスターのスタミナも考えて、「意外とこれ、自分から行けば倒せるんじゃないか?」って思ったんじゃないですかね。それでアントニオ・シウバがアリスターを打撃で打ちのめすということをやってみせたので、前例ができちゃったんですよね。

――アリスター攻略法が一夜にして広まってしまった、と。

 

高阪 そうなんですよ。だから次にやったトラヴィス・ブラウンなんかも、同じように序盤のラッシュを耐えて、打撃で逆転勝ちでしたもんね。だから、ハッキリ言って、対戦相手はアリスターの研究をしやすくなってしまいましたよね。

 

――そしてアリスターは、その研究を上回るバージョンアップがなかなかできずにいるという。

 

高阪 そうですね。いままでのままだと同じことになるので、そこで何をして補うかっていうことですよね。で、アリスターが前回、ベン・ロズウェルに負けてから、まだ数ヶ月しか経ってないじゃないですか。

 

――前回は9月でしたから、まだ3カ月ですね。

 

高阪 正直、それだけの期間で新しいことを身につけるのは難しいと思うんですよ。それでも精神的にケツに火がついた状態のアリスターが、どれだけ自分の力を出せるのか、そこに興味がありますね。

 

――本当にアリスターの真価が問われますよね。

 

高阪 そうですね。本人の闘う能力がどれだけ残っているのか。それが出せないと、そんなに簡単には勝てないと思いますよ。

 

――ストルーブはUFCで13戦もして9勝しているファイターですからね。しかも2メートル13センチで、あのセーム・シュルトより1センチ高いという(笑)。

 

高阪 そんなにデカいと、動きがノロノロしてると思いますけど、そうじゃないですからね。

 

——また、ボブ・シュライバーの弟子っていうのがいいですよね。

 

高阪 なんか、リングスの匂いがプンプンしますね(笑)。だから、リングスファンにとっては裏メインじゃないですか? クリス・ドールマンの弟子と、クリス・ドールマンの弟子だった男の弟子の闘いという(笑)。

 

——じゃあ、勝手にハンス・ナイマン追悼試合ということにしますかかね?(笑)。

 

高阪 自分もそういう年を送りながらみますよ(笑)。

 

——オランダ人ファイターらしい荒々しい試合になることは間違いないということで。また、この2試合で、今後のヘビー級も大きく動きそうですね。

 

高阪 かなりスクランブルが起こる可能性はありますね。ヘビー級の勢力分布図が変わりますよ。いっつも言ってますけど、ヘビー級は何が起こるかわからないですからね。一発のパンチですべてがひっくり返るし、4人ともそういう武器を持ってますから。ヘビー級の醍醐味を見せてほしいですね。

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