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  • 2014.11.27

変態座談会 #14

あらためて語ろう! 高田vsヒクソン戦 『PRIDE.1』変態座談会【後編】「あの試合で俺たちは大人になった。プロレスファンのイニシエーションだよ!」

浅草キッドの玉袋筋太郎、構成作家・椎名基樹、プロレス&格闘技ライター・堀江ガンツの“変態”3人が、酒を飲みながら居酒屋で好き勝手に語りまくる変態座談会。今回も、BSスカパー!でPRIDEアーカイブ番組『PRIDE HERITAGE』がスタートしたのを受けて、あの高田vsヒクソンが行われた『PRIDE.1』について語ります!

 

ガンツ では、前回に引き続き、『PRIDE.1』を語っていきましょう!

 

玉袋 まあ、高田vsヒクソンっていうのは、いま考えてもよく実現したなっておもうんだけどよ。その前の安生がヒクソンの道場破りに行っちゃったっていうのが、一番とんでもねえ事件だと思うよ。

 

椎名 間違いなく、90年代最大の事件でしたね。第2位はNKホールの前田日明襲撃事件(笑)。

 

玉袋 どっちも安生じゃねえかよ!(笑)。

 

ガンツ だから、安生洋二がはからずも歴史を動かしましたよね。

 

玉袋 そうなんだよな。俺、Uインターが安生をヒクソンの道場に送り出す前の大会っちゅうか、リング上で発表した大会、観に行ってるからね。

 

ガンツ 安生がヒットマンに指名されて(笑)。

 

玉袋 そうそう、あのちっちゃい鈴木健さんが発表するんだよ。

 

椎名 それで「200%勝てる」とか言ったんでしょ? よくあれだけの大口が叩けるなって感心したもん(笑)。

 

ガンツ でも、あれは宮戸さんが作った原稿をそのとおり読まされてるだけで、安生さん自身は、「200%勝てる」なんて言いたくなかったらしいですけどね(笑)。

 

玉袋 それで自分の意志とは関係なく、会社のために道場破りに行かされちゃってな。あんなの、殺されに行くようなもんだろ? もし勝ったところで、ヒクソンの弟子たちに袋だたきにされるに決まってんだから。そう考えると、安生の勇気ってすげえよ。

 

椎名 BSスカパー!の『PRIDEヘリテージ』でも、「いまでも心に傷が残ってる」って言ってたもんね。

 

ガンツ あのインタビュー、ボクが聞き手をやったんですけど、途中でカメラをストップしたんですよね。安生が「もうしゃべれない」って言って。

 

玉袋 言ってみりゃイスラム国に行くようなもんだからな。

 

ガンツ そうですよね。「イスラム国に行って、話つけてこい」みたいな。

 

椎名 カルトみたいなもんだしね(笑)。

 

玉袋 ホントだよ、グレイシーなんつったら。

 

ガンツ 安生さんも本心では「行きたくねえな」と思いながら行かなきゃいけない。大変な任務ですよ。

 

椎名 でも『PRIDE.1』のヒクソン戦自体、髙田も「行きたくねえな」はあったんじゃない?

 

ガンツ もちろんあったみたいですよ。これもインタビューで高田さん本人に聞いたら、安生さんの道場破り失敗のあと、しばらくしてバラさん(榊原信行)と出会って。最後に一発、大一番をやって現役を終わりにしようと思ってたらしいんですよ。だから、最初はやる気だったんですけど、状況が二転三転して、一度は「この話はなし」ってなったみたいなんです。

 

椎名 二転三転ってルール的なってこと?

 

ガンツ いや、やるかやらないかっていう話が二転三転したみたいです。高田にしてみたら、レスラー人生最大の大一番、しかもリアルファイトでやるっていうのに、「何月何日に決まりました」、「やっぱりなくなりました」みたいなのが繰り返されて、高めていた気持ちが冷めちゃって、「もうやめよう」って決めたらしいんですよ。しかも、同じタイミングで「マイク・タイソン戦が実現できそう」っていう話が入ってきたんで、じゃあ、そっちにしようと。

 

玉袋 高田vsタイソン戦っつーのもあったな~。

 

椎名 雑誌に「髙田が対戦要求」とか載ってましたよね。

 

ガンツ あれ、タイソンがちょうど一番お金がないときで。猪木vsアリと同じで、要は日本のプロレスラーとやるのが、一番手っ取り早くカネになるってことで。

 

椎名 俺、タイソンの自伝読んだから、だいたいどの時期の話かわかるよ。きっとレイプ事件後だね(笑)。

 

ガンツ ボクシングで大金を稼ぐには、タイソンとはいえ、本当に強い相手とやらなきゃお金にはならない。でも、日本でプロレスラーとやれば、カネになるってことで、タイソン側もやる気だったらしいんですけど。高田はヒクソン戦が動き出したときに、委任状だか契約書だかに「ヒクソンとやります」って書いて、サインしちゃってたらしくて。ヒクソン戦キャンセルしてタイソンとやったら、違約金払わなきゃいけないってなって、しぶしぶ「じゃあ、タイソン戦は諦めて、ヒクソンとやるしかねえか」ってなったらしいんです。

 

椎名 そうだったんだ。キングダムの最初の興行、高田がエキシビションやったの観た?

 

ガンツ 観ました。上山龍紀とエキシビションやったんですよね。

 

椎名 元気なかったよね。凄い汗出てね。あれ観て、「これはダメだ」って思ったもん。

 

玉袋 高田さん本人も「幻想に飲まれてた」って言ってたよね。

 

ガンツ 安生がやられてるんだから、自分もUWFの技術のまま出ていったらダメだってことで、これまでと全然違う方向の練習ばっかりして、まさに迷走してしまったという。体格差が一番のアドバンテージなのに、なぜか一生懸命減量したりして(笑)。

 

玉袋 だけどまあ、入場から何からヒクソンが勝ってたもんな。

 

椎名 ヒクソンはガウンの袖もちょっと長くて、あれがなんだか怖いんですよね(笑)。ブランブランして。

 

玉袋 それでひゅいっと猫みてえにジャンプしてリングインしてよ。

 

ガンツ 髙田の入場もカッコいいんですけど、リングインしたときにはヒクソンに向かって礼を2回してるんですよ。あれ見て、精神的に負けてるな~って。

 

玉袋 その前に安生とハグしちゃってるとこで負けたよな。 

 

ガンツ 高田さんも言ってましたけど、入場前、「これから死刑台に上がるみたいな気分だった」って。

 

玉袋 死刑台だよなあ。

 

ガンツ だから、こっちも必死になって応援したんですけどね。

 

椎名 でも、最初から高田は勝てないと思って観てた?

 

ガンツ 正直、難しいだろうなって思ってましたけど、そういう気持ちは封印して、「高田はやってくれる」って自分に言い聞かせて観てました(笑)。

 

玉袋 わかる! 高田が簡単に負けたら、「俺たちがプロレスに費やしてきた人生はなんだったんだ」ってなるわけだからさあ。

 

椎名 なんかマスコミの論調も「高田が勝つと思ってるプロレスファンはバカだ」ぐらいの論調だったよね(笑)。

 

玉袋 負けるのわかってても、あえて高田に張る、高田に乗るっていう気持ちがわかってねえんだよ!

 

ガンツ クールを装って、「ヒクソンの土壌であるバーリ・トゥードでやれば、そりゃヒクソンが勝つよ」とか、「高田じゃ無理だよ」って言えば、こっちも傷つかずに済みますけどね。

 

玉袋 そうじゃねえんだよ。あそこで高田に乗らねえプロレスファンは、プロレスファンじゃねえって思ってたからね。

 

ガンツ 子どもの頃から、いろんな場面でプロレス八百長論と闘ってきて、ここにきて逃げるなよってことですよね。

 

玉袋 そうだよ。昔はプロレスがバカにされると、ファンだって闘ってきたんだから。でも、真剣勝負で負けたら、そうやってプロレスファンとして生きてきた人生を否定されるわけだから。「違うんだよ」って言われたようなもんだよな。『マトリックス』の世界だよ。「現実はこっちだよ」って。

 

椎名 アハハハハ! 「いままで夢だったんだ!」(笑)。

 

ガンツ それに、ヒクソン戦のときに高田を応援した、我々プロレスファンっていうのは、盲目的にプロレスを信じてたわけじゃないですからね。『PRIDE.1』の時点で、国内でそれまで行われたバーリ・トゥードの試合なんて、ほとんど生で観戦してるわけだから。

 

玉袋 観てるよお。

 

椎名 ヒクソンが初めて登場したバーリ・トゥード・ジャパンだって観てるしね。

 

ガンツ だから、何もわかってないで「髙田がんばれ!」って言ってるわけでもなく、プロレスラーがバーリ・トゥードで何もできずに負ける姿を人一倍観てきてるわけですからね。

 

椎名 ビガロがキモに負けたのも観てるし、ケンドー・ナガサキがジーン・フレジャーにKOされるのも観たし。あれなんか駒沢体育館だよ? 高校生がバスケットやるような会場だよ。

 

玉袋 区役所に申請してるよな。

 

椎名 そうですよね(笑)。ママさんバレーですよね?

 

ガンツ 北尾がペドロ・オタービオにやられたのもあそこですからね。

 

玉袋 そうだよ~。

 

ガンツ そういったバーリ・トゥードをさんざん観てきて、大ボスのヒクソンが出てきたら、そりゃあどっちが勝つか冷静に予想したらヒクソンだけど、あえて高田に乗るしかないって気持ちですよね。プロレスファン人生が懸かってるんだから。

 

玉袋 だから俺、あの日、高田さんが負けたあとの記憶がねえもん。放心状態で。俺、どこに飲みに行ったんだろう? 

 

椎名 ガンツはまだ『紙プロ』で働いてなかったんでしょ?

 

ガンツ まだ、いちファンでした。ボクなんかも高田が負けたあと、「ああ、負けちゃった……」みたいな感じになって、悲しいも何もなかったんですけど。別の席で観てる友達と合流したら、押さえていた感情が溢れて涙が出ました(笑)。

 

玉袋 わかるよ。泣くよそりゃあ。

 

ガンツ 負けて悔しいとかじゃなくて、なんか感傷的になって。卒業式とか、そっちに近い感情。

 

椎名 なるほど。大人になったのね。イニシエーションであったと。

 

玉袋 あれがなければ大人になってないわけだ。あそこで一皮剥けたわけだよ。

 

ガンツ あの日で、なんか変わりましたね。

 

玉袋 まあな。変わったよな。

 

ガンツ でもそれで「髙田にダマされた」とは一切ならないですよね。

 

玉袋 一切ないよ。俺たちを大人にさせてくれたんだから、感謝しかねえ。

 

椎名 高田がヒクソンとやらなかったら、PRIDEもなけりゃ、総合格闘技の時代だってなかったわけだもんね。

 

ガンツ だからすべては、安生の勇気と髙田の勇気で始まってるわけですよね。

 

玉袋 そうだよな。それを見て見ぬふりして、なかったことにしたっていうさ。業界の罪もデカいよ。

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