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  • 2014.11.13

変態座談会 #12

男・玉袋筋太郎も号泣! 長与千種&ダンプ松本『ザ・ノンフィクション』変態座談会「ドーランの下に涙の喜劇人、そして極悪メイクの下に、涙の女子プロレスラーがいるんだよ!」

浅草キッドの玉袋筋太郎、構成作家・椎名基樹、プロレス&格闘技ライター・堀江ガンツの“変態”3人が、酒を飲みながら居酒屋で好き勝手に語りまくる変態座談会。今回は、10月26日にフジテレビで放送された、長与千種とダンプ松本のドキュメンタリー番組『ザ・ドキュメント~敵はリングの外にいた~』について語ります!

 

ガンツ 今回は椎名基樹さんの都合がつかず、玉さんと二人変態座談会とさせていただきます(笑)。

 

玉袋 まあ、椎名先生は売れっ子作家だから、しょうがねえだろう。でね、売れっ子芸人の俺も、このあいだ日曜日のエアポケットである午後2時、なにげなくテレビを観てたんだよ。

 

ガンツ 売れっ子の休息時間に(笑)。

 

玉袋 ぼけーっと日曜の午後を自宅ですごしてたらさ、偶然、長与千種とダンプ松本の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ、10月26日放送)を観てしまったというね。あれは重い番組だったな~。

 

ガンツ ボクは残念ながら見逃しちゃったんですけど、すごい反響ありますよ。

 

玉袋 そりゃ、あるよ! 日曜の昼下がりに、ドーンと重てえもんを突きつけられたからね。

 

ガンツ また日曜日の午後っていう、かつて『全日本女子プロレス中継』がやってた時間っていうのが、よりその重いを強めるというか。

 

玉袋 ホントだよ! だからさ、あの番組は日曜日の深夜にまた再放送してほしい! 全女が最後の頃、放送していた時間帯だから。そういう栄枯盛衰を感じさせるっつーかさ。あれだけの時代を作った二人のそれぞれの生き方、人生をむき出しで見せてもらったんだよ。そして『敵はリングの外にいた』っていうタイトルがまたしびれるじゃない?

 

ガンツ リングを降りてからが、本当の試練というか。じゃあ、かなり胸に突き刺さる内容だったんですか?

 

玉袋 突き刺さるなんてもんじゃねえよ。番組ではさ、長与千種の今とかを映し出してるわけだよ。俺も引退したあと店をやってるとか、それぐらいは知ってたんだけどよ。いま、千種はスナックやってるんだけど、プロレスのことは一切そこでは出さないでさ。それで太っちゃって、お客さんとカラオケ歌ってるわけだよ。で、店舗の2階が自宅で、お客さんが帰ったあと、階段を上がってカップラーメン食ってるんだよ。

 

ガンツ 女子プロレス界最大のスーパースターが、カップラーメン食ってますか……。

 

玉袋 あとはレトルトのハンバーグとかね。イシイのハンバーグみてえなやつだよ。それ観てよ、なんか「あ~~~~~」って思ったね。

 

ガンツ 観ちゃいけない姿を見たというか。

 

玉袋 だって、あの頃(全盛期)の千種を知ってる人間からしたらさ、こんなことあるの?って思うよ。

 

ガンツ それこそクラッシュ時代の長与千種は、それこそ本当に“レインメーカー”でしたからね。

 

玉袋 そうだよ! カネの雨が降るどころか、カネの土砂降りで、経営者の松永兄弟がカネに溺れちゃうくらいだぜ?

 

ガンツ ダハハハハ! カネを降らせすぎて、人生狂わせた(笑)。

 

玉袋 それぐれえのもんだから。しかもさ、生い立ちがまた厳しいんだよ!

 

ガンツ 当時の女子プロレスは、家が貧しかったり、片親だったりした人が多かったらしいですけど、千種はとくに大変だったみたいですね。

 

玉袋 なんか昭和の女子プロならではなんだけどよ。そういうハングリーさとかね、絶体絶命な幼少期を過ごしてるから、やる気と覚悟が違うよ、やっぱり。だって千種なんて、親御さんに捨てられてさ、親類の家に預けられて、犬以下の生活をしてたんだよ。犬以下だよ!

 

ガンツ うわぁ……。それ、10歳とかなんですよね?

 

玉袋 そうだよ! エサを与えられるような生活だぜ?

 

ガンツ まるで、シンデレラのような。

 

玉袋 シンデレラ以下だよ! 

 

ガンツ かぼちゃの馬車がいつまでたっても来ないシンデレラ(笑)。

 

玉袋 その代わり、たまに両親が来るらしいんだけど、「都合のいいときだけ来るんじゃねえ!」っていう、凄い反骨心が芽生えるんだよな。そういうバックボーンがあって、どん底の生活からの駆け込み寺が全女だったってことなんだよな。

 

ガンツ なるほど~。なんか長与千種は、ほとんど親の愛情を受けてないらしいですよね。

 

玉袋 受けてねえんだよ。

 

ガンツ 柳澤健さんの『1985年のクラッシュ・ギャルズ』(文芸春秋)で読んだところによると、生まれた瞬間から受けてなかったって。

 

玉袋 あ、そうだっけか。それも、もう一回読まなきゃいけねえな。

 

ガンツ 長与千種は次女なんですけど、親父は競艇選手で、どうしても息子を競艇選手にしたいってことで、二人目は男の子が生まれてほしいって強く思ってたんですけど、残念ながら女の子だった、と。だから、父親からは男として育てられたらしいんですよ。

 

玉袋 うわぁ……。

 

ガンツ で、姉の名前が一二三(ひふみ)さんって言うんですけど、それは競艇の「1着2着3着」っていう意味なんですよ(笑)。

 

玉袋 おいおい、3連単が名前かよ!(笑)。ある意味、キラキラネームだよな。

 

ガンツ で、千種っていうのは、「1000円船券(競馬で言う万馬券)の種」ってことらしいです(笑)。

 

玉袋 ほとんど、『ギャンブルレーサー』の世界だよ!(笑)。いや~、なんか、その名付け方だけで、大変な親父さんだっていうのがわかるな。

 

ガンツ でも、親父さんはケガで競艇選手は引退しなきゃならくなって、その後、スナックを経営したんだけど、手を広げすぎて失敗。そのあと千種は捨てられるように、親戚宅を転々とすることになったらしいですね。

 

玉袋 すげえ幼少期だよ。でさ、プロレスラーとして成功してらしたで、その稼ぎ目当てに自分を捨てた親が寄ってきてさ、千種はそのカネを親に全部渡しちゃったりしてるところがすげえんだよ。なんだよ、その人間の業、親子の業っていうのはさ。普通だったら、そんなことありえねえよ!?

 

ガンツ 自分を捨てた親ですからね。しかも、カネ目当てで都合良く寄ってきて。

 

玉袋 だけどそこに、親子の業の物語が入ってくるんだよな。

 

ガンツ だから全盛期の長与千種っていうのは、とんでもない額を稼ぎ出しながら、全女の松永兄弟に搾取され(笑)、自分のところに給料として入ってきたお金も親に渡してしまったということですよね。

 

玉袋 そうなんだよな~。あの輝きの裏に、そんなことがあったわけだからな。

 

ガンツ あの当時の千種の凄まじいばかりの輝きっていうのは、もう女子プロレス界において、まさに「100年に一人の逸材」ですもんね。

 

玉袋 そうだよ! ルックスもいいしよ、試合も誰よりも興奮させる試合をするしよ、何よりもカリスマ性ってもんがすげえじゃん。

 

ガンツ あんな凄いレスラー、これまでいないわけですもんね。

 

玉袋 いない! でね、その長与千種と同期で全女に入った松本香さんのストーリーもいいんだよ!

 

ガンツ 松本香ことダンプ松本。

 

玉袋 松本智津夫こと麻原彰晃みたいなね。

 

ガンツ 全然違いますよ!(笑)。

 

玉袋 長与千種と松本香っていうのはさ、全女の中では同じように落ちこぼれて、だからこそ仲良く新人時代を共に頑張ってたんだけど。それがベビーフェイスとヒールに道が分かれることで、運命も分かれていくんだけどさ。ダンプはダンプで、極悪レスラーとして成功したあと、これは有名な話だけど、ヒールとして大変な思いをしながら、お母さんに家を建ててあげたりとかさ。あんな話ないぜ~!

 

ガンツ お母さんも日本一の悪党の親として苦労したから、その恩返しってことですよね。

 

玉袋 でね、女の幸せっていうのはさ、いまは時代が変わってきて、結婚しねえで自立してひとりで生きていく女性も増えてるけどさ。まあ、ダンプのお父さん、お母さんの世代からすると、娘が結婚して幸せな家庭を築くことが幸せになるわけじゃない? それがまだできないことを悩んでる両親もまたいいんだよ~。

 

ガンツ まだ、両親はダンプちゃんに結婚してほしいと思ってるんですね(笑)。

 

玉袋 でよ、現在の親子関係の話で言うと、長与千種は実家のがある長崎でお母さんがひとり入院してて、そこに会いにいくんだよな。お父さんはもう亡くなっちゃってるから。で、会いに行ったら、お母さんはホントにもうガリッガリになっちゃってて。そのお母さんに、「長崎の病院を出て、一緒に東京で暮らそう」って切り出すところとか、凄かったよ。「そこまで背負い込むのかよ!?」っていうね。

 

ガンツ 千種自身も、いまは裕福な暮らしをしてるわけじゃないのに。
 

玉袋 あれを見て、なんなんだろうなって思ったよ。一方で、ダンプちゃんはいま、プロレス活動以外に、いろいろ営業をやってるんだよ。たとえば、見知らぬ人のパーティにあの極悪の格好で行ってよ。サプライズで暴れて、そのあとみんなと記念撮影したりとかさ。おひねりもらって喜んじゃって、「もらっちゃった♡ 中身は内緒」とか言っちゃってさ。そういうのって、俺も芸人だからわかるんだよ。おひねりに一喜一憂してる自分とかさ。あれだけ一世を風靡した自分が、知らねえパーティに来て、おひねりもらってよろこんでる現実とかね。身につまされたよ!

 

ガンツ 有名人の悲哀というか、現実ですよね。

 

玉袋 だってよ、何も知らない少女が10代でプロレスの世界に入ってきてよぅ、プロレスしか知らねえんだから。それでいざ引退してどうするだってなったら、そりゃ途方にくれるよ。

 

ガンツ 一生、プロレスラーとして生きていくしかないのに、プロレスを引退しなきゃいけないんですからね。

 

玉袋 そうなんだよな。だからある日、ダンプから千種のところに、泣きながら電話がかかってくるんだよ。それでダンプが泣きながら「また一緒にプロレスやろう」って言ってさ、千種も「よし」って言って、そっからトレーニングジムに通い出してさ。

 

ガンツ 51歳と49歳の、言っちゃえばおばさん二人が。

 

玉袋 もう二人とも50だぜ!? なんて人生だよ。あの二人だったら、いまごろプール付きの豪邸に住んでたっていいはずなんだよ!

 

ガンツ 稼いだ額でいったら、そういう豪邸が買えるぐらい稼いでいたわけですもんね。ただ、搾取されて、手元にはその何文のⅠ、何十分の1だったかもしれませんけど(笑)。

 

玉袋 稼いだ額は天文学的額だもん。だからよ、ミッキー・ロークの映画『レスラー』じゃねえけどさ。ホント、あの『レスラー』の世界なんだよね。

 

ガンツ かつての大スターが、トレーラーハウスに住んで、スーパーで働きながらプロレスやってるみたいな。

 

玉袋 映画『レスラー』より、もっと大変かもしれねえよ? 女子プロレスラーの第二の人生っていうとさ、皆さんお店やったり、いろんなことやってるけど、大変は大変だよな。もちろん、どこを基準にして「幸せ」ってもんを計ればいいかはわかんないけどね。いま生きてるだけで、本当は誰しも幸せなんだから。だけど、あの大スター、長与千種とダンプ松本ってことを考えるとなあ……。

 

ガンツ ホント、プロレスの歴史に燦然と輝く二人ですからね。

 

玉袋 あと千種とダンプ以外に、もうひとり出てくるんだよ。あの極悪同盟の、名前なんだっけかな……。

 

ガンツ クレーン・ユウですか?

 

玉袋 そう! あのクレーン・ユウがさあ、子ども3人いるんだけど離婚しちゃって、生活保護を受けてるんだよ。

 

ガンツ 極悪同盟ナンバー2が生活保護ですか……。

 

玉袋 そのクレーン・ユウのところにも、「一緒にやろう」ってダンプから電話がかかってきてさ。クレーン・ユウは試合はしねえんだけど、長与とダンプが試合するとき、ダンプのセコンドに着くんだよ。普段の見た目は、本当にそのへんの主婦だよ? いっちゃ悪いけど、決して奇麗にはしてねえ、そのへんのおばさんだよ。その主婦が、極悪のメイクをしてリングサイドに着くんだよ~! その極悪メイクの下に、涙の女子レスラーがいるんだよな! 「ドーランの下に涙の喜劇人」みたいにね。俺なんか最後、泣きながらこの番組観てたよ!

 

ガンツ 号泣でしたか(笑)。でも、人生を考えちゃいますね。

 

玉袋 考えるよぅ。でさ、番組の。最後は「もう一度、プロレスをやろう」ってことで終わるんだけど。そのプロレスを時代が求めてるのかっていうのもあるしね。それって、どうなんだろうって思うもんな。いろんな感情を日曜日の午後に感じさせてもらったね。

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