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  • 2014.07.03

GK金沢克彦コラム #2

GK連載コラム第2回!! 「橋本真也は沈黙と静寂のなかでも自分を表現できる稀有なレスラーだった」

もうすぐ7月11日 
あらためて橋本真也というレスラーのことを考えてみた

 かつての大ヒット商品『nWo』Tシャツが復活するという。1990年代後半、街を歩けば『nWo』Tシャツにあたるという感じで猫も杓子もnWoという時代があった。まあ、猫や杓子(しゃもじ)がTシャツを着ているのを見たことはないけど、とにかく日本だけでも20万枚以上を売り上げたプロレスグッズ史上最高のヒット商品であることは間違いない。もちろん、当時の米国WCWはWWEに吸収されているため、この復活『nWo』TシャツはnWoジャパンの総帥であった蝶野正洋が運営するアリストトリストとWWEのダブルライセンス商品として発売されることになるという。めっきりリングから遠ざかっている蝶野だが、そのスマートな頭でしっかりビジネスマンになったのだなあと感心するニュース。

 

 一方、武藤敬司は3日後の7・6『WRESTLE-1』両国国技館大会にグレート・ムタとして登場。メインで真田聖也の保持するTNA Xディビジョン王座に挑戦する。日本マットでのムタ降臨は、今年の新日本1・4東京ドーム大会以来となる。周知のとおり、蝶野は首に爆弾を抱えており、武藤はヒザがボロボロの状態。年齢的にも五十路に入った。天龍源一郎=64歳、藤原喜明=65歳、長州力=62歳、藤波辰爾=60歳がいまだ現役でいることを思えば、それほど驚くことではないのかもしれないが、蝶野にしても武藤にしても50代に入って自分が現役レスラーでいる姿を、たとえば10年前には想像もしていなかったのではないだろうか? ましてや武藤(※ムタだけど……)は、W-1が興行的にやや苦戦を強いられていることもあってか、両国国技館という大舞台でメインを務めるのである。

 

 こうしていまも現役でマット界に関わるレジェンドたち。それに関して、金沢克彦=52歳がとくにどうこう言うことはないし、とくにどうこう言う言葉も見つからない。集客できるかどうか、プロレスの興行とはそれがすべてであるからだ。もっと言うなら、「プロレスとはなんぞや?」という命題にぶつかったとき、それをこれ以上もなく見事に表現しているのは、アントニオ猪木のセリフだろう。

 

 かの小川直也がプロレス界に身を投じ、猪木のもとでデビュー戦へ向け修行を積んでいたときのエピソード。小川は猪木に「プロレスとはなんですか?」と問い掛けた。そこで、すぐさま猪木の答えは返ってきた。

 

「プロレスとは闘いである。また、プロレスとは興行である」

 

 やはり、その通りだと思う。じつはここまでの話はワタクシお得意の単なる前置きなのである(笑)。かといって、蝶野と武藤の話題から始めたことにはちゃんと意味がある。そう、もうすぐ7月11日がやってくる。闘魂三銃士の1人であった橋本真也さん(以下、敬称略)の命日。破壊王が40歳の若さでこの世を去ってから、9年目の夏となるわけだ。もし、橋本が生きていたなら49歳になったばかり。「49歳の橋本真也はなにをしていたのかなあ?」と考える。なぜ、いま橋本のことを考えるようになったのかというと、そこにも理由がある。現在、サムライTVと辰巳出版が共同で制作中のDVDムック、デビュー30周年記念『“破壊王”橋本真也 ゼロワン激闘録』に私もかなり関わっているから。私の場合、2001年の旧ZERO-ONE旗揚げから現在進行形のZERO1にいたるまで、13年以上も『スカパー!』PPV中継やサムライTVのレギュラー解説を務めてきたわけだから、協力するのは当然である。DVDのほうでは、橋本を中心に過去のゼロワンの名勝負を収録し、試合の合間合間に大谷晋二郎と私による対談が入る。そして、ムックのほうには旗揚げメンバーである大谷と高岩竜一(フリー)による対談や私へのインタビュー、過去、ゼロワンに関わってきた選手たちの談話・秘話などが掲載される。

 

 大谷-高岩対談の進行役は私が務めているが、対談は2時間に及び、私へのインタビューにいたってはなんと4時間という長丁場。ただし、それぐらい時間が掛かるのも不思議ではない。なにせ、橋本による『新日本プロレス ZERO』立ち上げに始まり橋本解雇騒動、『ZERO-ONE』への名称変更。そこからノアとの交流、旗揚げ戦、猪木との決別、小川とのOH砲結成、ゼロワン分裂、橋本の急逝、橋本大地のデビューまで、すべてを語るインタビューとなったから。正直、資料をそろえ、これをすべてまとめる編集のS君は「気が狂いそうになりました」と苦笑していたが、まったくもって同情する(笑)。

 

 当時、現場でそれを取材していた私でさえ忘れかけていたり、時系列が頭のなかでゴチャゴチャになりかけているのに、その歴史をすべて整理しなければいけないのだから。

 ただ、この1週間ほど、これだけ橋本尽くしの破壊王まみれ(笑)になると、橋本真也というレスラー、橋本真也という人間のことをあらためて考えさせられる。というか、いま私の頭のなかに破壊王がこびり付いてしまって離れてくれないのだ(笑)。ただただ橋本真也という人間が好きでなんの迷いもなく橋本についていった高岩は、クールな性格そのままにこう言った。


共にZERO-ONEの旗揚げに参加し、橋本さんを一番近くで見ていた大谷と高岩
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