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  • 2014.11.06

高阪剛が語る『UFC 179』アルドvsメンデスの凄さ!「格闘技的にありえない『ロッキー』が実在しましたね」

10.25『UFC 179』で、ついに実現したフェザー級頂上対決、ジョゼ・アルドvsチャド・メンデスのUFC世界フェザー級タイトルマッチ。まさにMMAの最先端と言えるこの激闘をWOWOW『UFC -究極格闘技』解説者、“世界のTK”高阪剛が語ります!

 

 

——先日の10.25『UFC 179』ブラジル大会は、メインのフェザー級タイトルマッチ、ジョゼ・アルドvsチャド・メンデスが飛び抜けて凄かったですね!

 

高阪 いやあ、驚きましたよね。まず、全体の大まかなガイドラインとして、あの強度の試合を55ラウンドできるあの2人はおかしいですよ。

 

――25分間も、あんな闘いができるのはおかしい(笑)。

 

高阪 しかも、お互いダウンを奪われてるわけじゃないですか? 

 

――両者ともにダメージがあるはずですよね。

 

高阪 だからね、自分は自分は格闘技をやるようになって、映画の『ロッキー』を観れなくなったんですよ。『ロッキー』って、バタッと倒れてダウン奪われて、それでもすぐに立ちあがって、また何事もなかったかのように殴り合いをじゃないですか? でも、実際に格闘技をやってる人間からしたら、「そんなの絶対にありえねえよ」って思うんです。

 

――あまりに非現実的だと感じて、『ロッキー』にしらけてしまった、と。

 

高阪 でも、アルドとメンデスは、同じことやってるんですよ(笑)。

 

——ダハハハハ! ロッキーが現実にいた(笑)。両者ともに、1ラウンドからダウンを奪われてましたもんね。

 

髙阪 いや、あんだけ食らって、すぐ立って、打ち返していくって、普通に考えたらできないですよ。もしできたとしても、前のダメージが残ってるから、そのあとちょっとでも打撃もらったら倒れてると思うんですけどね。

 

――とくにチャド・メンデスなんか、1ラウンドの最後にKO寸前になったとは思えないリカバリーぶりでしたもんね。

 

高阪 メンデスはリカバリーする力があるのはもちろんなんですけど、おそらく自分の中で相手を倒せるプランというのを何種類か持って、今回の試合に臨んできたなという感じがしましたね。最初に突っ込んでいって、近い距離でやりあうという闘い方、あれがプランAだとすると、2ラウンド目というのは、スタンドで距離を取って、そこからサイドステップだったり、スイッチを使っていた。

 

――前に出られなくなったというより、明らかに1ラウンドとは闘い方を変えてきましたよね。

 

高阪 そうなんです。もちろんダウンしたダメージは残っていたとは思うんですけど、距離を取って、ただスイッチを使うだけじゃなく、常に距離を保ちながら、なおかつプレッシャーを掛け続けて、打撃を重ねていってましたよね。プランAで仕留められなかったら、明らかに違うプランBを出してくる。ああいうことが、いまのUFCでは大事なんだろうなということが、また再認識できましたね。

 

――レベルが高いだけではなく、いろんなカードを持っているという。

 

高阪 しかも、その違うカードというのが、単体の技ではなく、ラウンドを通してできる技術だったり、闘うスタイルのプランですよね。試合の中で、そのプラン自体をガラリと変えてしまう。あの姿を見て、技術やフィジカル以上のレベルの高さを痛感しましたね。

 

――アルドにしてみたら、2ラウンドになったら、まったく違うタイプの選手が出てきちゃった感じですよね?

 

高阪 そうですよ。1ラウンドとは違う人と試合をしてるような感じでしょうね。ああいうふうに、試合中に闘い方を変えるっていうのは、いままでは単発の技術だったんですよ。打撃でやっておいて、タックルに切り替えたりとかだったんですけど、チャド・メンデスは距離の設定の仕方とか、動き方とか、相手が見たときの全体像の印象自体も変えてしまうやり方をしてましたから。あれは、相当な能力の高さがないと、できないことですよ。

 

――まったく違うスタイルを持ちながら、それがどちらもチャンピオンシップができるくらい高いレベルじゃなきゃいけないわけですもんね。

 

高阪 だから、チャド・メンデスがプランBを持ってなかったとしたら、2ラウンド早々にKOされてたんじゃないかと思うんですよね。

 

――1ラウンドと同じように向かっていこうとしても、あそこまでは踏み込めず、中途半端な距離になって、アルドのワンツーの餌食になってた可能性は高いですよね。

 

高阪 だから、チャド・メンデスは前回負けてから2年半のあいだに、自分の中に新しい違う闘い方を身につけてきたということですよね。

 

――しかも、単純に打撃技術っていうだけでもあのレベルアップぶりは凄かったですよね。

 

髙阪 何をしてるんだ、この人はっていうくらいでしたよ(笑)。

 

――フィジカル的にも、身体の筋肉の詰まり具合も凄かったですし。

 

高阪 そうですね。ただ、総合格闘技っていうのは、身体のトータルバランスなんですよ。結局、フィジカル強化してもスピードが落ちてしまう場合もある。逆にスピードを重視しすぎたために、踏ん張る力が出なかったりすることもある。また、技術やプランにとらわれすぎて、相手が何をしようとしているのかっていうのを客観的に見る力がちょっと落ちてしまったりとか。総合格闘技っていうのは、能力を高めながら頃合いを見つける、全体のバランスなんですよね。で、アルドとチャド・メンデスっていうのは、そのバランスを整える能力も非常に高かったと思うんですよ。

 

――実際、メンデスはパワーアップしてるのに、ハンドスピードももの凄く速かったですよね。

 

高阪 これは両者に言えることですけど、あの打撃をちゃんと見切ってるんですよね。

 

――確かに、二人ともなかなか被弾しないんですよね。

 

高阪 お互いスピードもコンビネーションもしっかりしてる中で、ガードもしっかりできている。これが、普段からやりあってる練習相手とかスパーリングパートナー相手にできるならわかるんですけど、対戦するのも2回目じゃないですか? で、なんでそんなことが起こるのかっていうのを……誰か研究してくれませんか?(笑)。

 

──ガハハハ! 現時点ではよくわからない(笑)。

 

高阪 もちろん、ジョゼ・アルドはチャド・メンデス対策、チャド・メンデスはジョゼ・アルド対策っていうことで、対戦相手を想定したスパーリングパートナーと実戦練習をやってるとは思うんですけど、それ以上の感覚的なものを感じますよね。

 

――動物的な勘も冴え渡ってるというか。

 

高阪 まさにそうですね。危機察知能力も非常に高いんですよ。

 

――となると、またMMAが新たなステージに上がった感じがありますよね(笑)。

 

高阪 ねえ。こうやっててっぺんのレベルが上がると、またそれがベースになっちゃうので。毎度毎度同じこと言ってすいませんけど、これからやる人は大変ですよ、これ(笑)。

 

――登っても登っても、頂上がどんどん高くなっていって(笑)。

 

高阪 あんな試合やられたら、「俺ならジョゼ・アルドを倒せる。タイトルマッチをやらせろ!」なんて、軽々しく言えないですよね。本当にそう思えるぐらい自分を高めることができた人か、ちょっと頭のネジが何本か抜けてる人じゃないと言えないですよ。

 

——いまビッグマウスで話題のコナー・マクレガーも、あの試合見せられたら、ちょっとトーンダウンするかもしれませんよね(笑)。アルドとマクレガーの大打撃戦はもの凄く観てみたいですけど。とにかく、この階級の進化のスピードは恐ろしいですね。

 

高阪 進化のスピードっていうのは、UFC全体について言えますけど、フェザー級はとくにそうですね。もちろん、打撃技術において、自分は攻撃しながら、なおかつ相手の打撃はかわす、ディフェンスするっていうのは、ごくごく当たり前のことなんですけど、そこにタックルがあったりとか、組付きにくるとか、後ろにケージがあったりとか、いろんなシチュエーションやファクターがある中で、それをやらなきゃいけないから、同じ打撃ではないんですよ。総合格闘技の打撃って。だから、そこの中で自分のいま持っている技術を向上させる、プラスアルファで別のシチュエーションのこともこれからは考えていかなきゃいけないということなんです。例えば、どんなにインファイトが強い選手も、距離取られたときの対処が必ずできなきゃいけない。「そこの打撃は得意じゃない」じゃ済まされないっていうことになってきていると思うんですよね。

 

──そうですよね。

 

髙阪 それをどうやって、日々の練習の中で積み重ねることができるか。指導する立場からすると、その積み重ね方を今後も考え続けなきゃいけないなっていうのを、今回のタイトル戦では思い知らされましたね。

 

――高阪さんのジムには、まさにUFCフェザー級の選手がいるわけですからね(笑)。

 

高阪 はい(笑)。(菊野)克紀をここまで持っていくためには、何が必要なのかなって。

 

――WOWOW中継で解説しながら、考えちゃいましたか(笑)。

 

高阪 やっぱり、そういう目で観ちゃいますよね(笑)。正直、てっぺんがここまで飛び抜けてるんで、もう一個一個やっていくしかないんですけど。一方で、てっぺんにいるチャンピオンが、明確なものを試合で見せてくれているので、下の選手はそこへ持っていこうとする意識としては、正しい方向に向けると思うんですよね。

 

――アルドが目指す方向性を示してくれている、と。

 

高阪 だから、ひと昔前みたいに試行錯誤するんではなく、そこに向かっていく練習ができるんですよ。ジョゼ・アルドやチャド・メンデスの闘い方っていうのは、現時点でのフェザー級という階級のひとつの答えだと思うんで。だから、それをひとつ題材にして考えるっていうことが、それぞれの選手なりにやれると思うんですよね。俺ならあそこはこうするとか。あれは俺もできそうだから取り入れてみようとか、いろいろできると思うんで。

 

――では、これからは日本人選手が、アルドやメンデスの闘いをもとに、どんなアレンジをして、自分のスタイルを高められるかっていうことも注目ですね。

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