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  • 2014.10.30

GK金沢克彦コラム #19

GK金沢コラム連載第19回!! 「王道プロレスとはなんぞや?」

 前回の当コラム(23日更新)で、全日本プロレスの取締役相談役に就任した馬場元子さんの様子と、元子さんと私の思いで話を書いている。今回も、もう少し全日本プロレスにこだわってみたいと思う。秋山準新社長が率いる新生・全日本プロレスのことである。

 

 その前に周知のとおり、まただれもが認めるとおり、いまのプロレス界は1強時代、1メジャー時代、新日本プロレス独走状態と言い切っていいだろう。先週の1025後楽園ホール大会も予想どおり、チケットは完売。私が試合開始時刻の午後6時半ちょうどに後楽園ホールに到着したところ、「本日の入場券はすべて売り切れました」という例の札が掲示され、すでにチケット売場は閉店していた。このホール完売伝説、あるいは満員伝説はまだまだ続きそう。なんせ、新日本のオフィシャル・ファンクラブ会員が先行発売でドドっといい席を購入してしまうから、一般でホールのリングサイド席を確保しようと思ったら、発売と同時にプレイガイドで即予約という気構えで準備していなければいけない。聞くところによると、この2年で新日本のファンクラブ会員は4倍に急増したという。そりゃあ、もう納得の集客ぶりという他はないのだ。

 もちろん、興行は際立って充実している、試合がおもしろい、お金を払う価値があるから、観客はチケットを買うし、観戦に訪れるし、前売り券を買いそびれたファンは午後3時ぐらいからチケット売場に並ぶという面倒な行為を厭うこともない。

 

 先週25日の大会もじつにおもしろかった。

 

 当日、ジュニアタッグ・トーナメント1回戦が4試合組まれているため、ノアの『グローバル・リーグ戦』に参戦中の永田裕志、小島聡、さらに天山広吉、中西学の第三世代はお休み。G1から先シリーズにかけて、ひとつのムーブメントを作りつつあった第三世代の4選手が不在でも、物足りなさはどこにもない。第1試合から鈴木みのるが登場して、矢野通と6人タッグでやり合うわけだから、観る側だって気が抜けないのだ。第2試合の10人タッグでは新日本隊とバレットクラブが真っ向激突。真壁刀義、内藤哲也、飯伏幸太というスター選手が第2試合に出てくることも凄いことなのだが、そこに交じっている本間朋晃の存在感もいつの間にか遜色ないものとなってきた。時に会場人気……観客からの声援では前記3選手を上回ってしまうのだから。

 

 よくよく考えてみてほしい。もし、本間という選手がフリ―の立場にいて他団体に出場しているとしたら、いったいどのような扱いを受けるだろうか? それがメジャー系であれ、インディー系であれ、決して上の試合では使ってもらえないと思うし、こんな大声援を受けることもないだろう。極端に言うなら、本間には申し訳ないが、「いりません!」と言われてしまうかもしれない。そういう選手の特長であったり、使い方であったり、抜擢の仕方であったりと、新日本の現場サイドは本間朋晃という商品の価値を最大限に生かす術を知っているのだ。念願のG1に初出場しながら全敗、それでいながら日々高まっていく“本間コール”の大合唱。

 

「優勝戦線から脱落した選手はどうでもいい、興味がない」という常識論、一般論を覆して、「とにかく本間が1勝をあげるところを、この目で観てみたい!」のほうが俄然興味の対象となっていく。これはマジックでも奇跡でもなく、商品への信頼度の高さと価値を生かすための戦略の勝利なのである。そして、商品たる本間自身がそれを理解して、自分のやるべきことを全身全霊を込めてこなし、そこに最高の充実感と喜びを感じている。これこそ、レスラーというナマ物の商品を生かした最高のサンプルと言っていいのだろう。

 

 なんとなく、本間朋晃論になりかけてきたが、選手をくまなく使いこなすパッケージとして完成された興行の完成度の高さとともに、日替わりヒーローが生まれることも新日本の大きな特色だろう。これは、ヘビー、ジュニアを問わず、主にリーグ戦、トーナメント開催中に起こる現象である。1025では2試合から主役・ヒーローが誕生した。

 

 まず、ジュニアトーナメント4試合のなかでセミフィナルに組まれたタイムスプリッタ―ズ(KUSHIDA&アレックス・シェリー)vsフォーエバー・フーリガンズ(ロッキー・ロメロ&アレックス・コズロフ)の1回戦。タイトルマッチであってもおかしくないマッチアップであり、予想どおり試合は白熱した。結果的に、ノンストップの目まぐるしい攻防を制したのは元ジュニアタッグ王者チームのフーリガンズで、現王者チームの“本命”タイムスプリッタ―ズが敗れ去る波瀾の幕切れ。館内はヤンヤヤンヤのお祭り騒ぎ。主役を奪ったロッキーはマイクを持って、ひさしぶりに「フォーエバー!」の決め台詞を連呼している。

 

続いて、和解した(?)棚橋弘至&柴田勝頼の合体に加え、棚橋vsオカダ・カズチカの1・4東京ドーム決戦(IWGPヘビー級選手権)と11・8大阪大会のインターコンチネンタル選手権(中邑真輔vs柴田)のダブル前哨戦の実現と、見どころ満載となるメインの6人タッグマッチ。

 

 最終的に試合を締めたのは、ここ最近まったく結果の出せない後藤洋央紀だった。しかも、NEVER無差別級王者として後楽園ホールで絶大な支持を集める石井智宏を昇天・改で堂々とピンフォールしてのけた。最後の最後で主役となった後藤は、「後藤革命」のスタートをぶち上げた。後日、11・8大阪大会では石井vs後藤がNEVER王座を賭けて激突することが決定。名勝負数え唄の復活である。パッケージプロレスで観客を大満足させて、サプライズ的な日替わりヒーローが誕生し、それが今後のタイトル戦線へとつながっていく。まさに理想的な興行であり、マスコミの目から観ても、「金を払っても観たい興行」と言えるのだ。実際に私自身も、11・8大阪はローテーションの関係でテレビ解説のメンバーに入っていないが、自分の会社の経費で取材に行こうと決めている。東京―大阪間の新幹線料金を払っても観たい興行ということになるのだろう。

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