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  • 2017.01.07

GK金沢克彦コラム #133

GK金沢コラム連載第133回!! 「It's Awesome!! 1・4東京ドーム」

「今年のプロレスの取材はもういいや」と思うほどの衝撃!
オカダvsケニーのK点超えプロレス!!
今年は1990年代を彷彿させるほど凄まじい数の観客が詰めかけるかもしないな、と勝手に想像を膨らませていた1・4東京ドーム大会。フタを開けてみたら、「あれっ? 去年とそんなに変わらないなあ」というのが正直な感覚。だけど、こればかりは曜日のマジック(?)によって大きな影響を受けてしまうから仕方のないこと。ここ数年で、年を重ねるたびにプロレス(新日本プロレス)ブームに拍車が掛かってきたことは間違いなくても、こと東京ドームの観客動員に関してはそれが正比例するとはかぎらないのだ。

例えば、2014年の1・4ドーム大会から遡ってみるとそれがよくわかる。2014年の観客動員数は、3万5000人。2015年が、3万6000人。この両大会の会場を一望したとき、「ひさしぶりにビッチリと埋まっているなあ」と嬉しくなったものだ。外野スタンド席こそクローズしているものの、内野スタンド席の最上部にあるジャンボスタンドにまで観客が入り、フィールドに設置されたイス席もバックネットのあるベンチ側まで相当に迫ってきていた。

そして、昨年の2016年が2万5204人、今年2017年が2万6192人となる。そこで先述した曜日のマジックが出てくる。2014年の1月4日は土曜日と、最高のシチュエーションが出来上がっていた。小学生〜大学生まで、生徒・学生さんたちは冬休み中なので問題なし。ところが、一般社会人の仕事始めというのは、1月4日、1月5日、1月6日のいずれかというのが普通らしい。
「らしい」と書いたのは、もちろん私自身が一般職を経験したことがないから(苦笑)。大晦日は格闘技かプロレス、年が明けて元日からプロレス、2日・3日も後楽園ホールでプロレス、4日は東京ドームという取材パターンが30年前から出来上がってしまっているのだ。

1・4が土曜日なら、仕事始めは必然的に6日の月曜日からとなる。これなら地方のファンも余裕で観戦に来られるわけだ。また、2015年は日曜日に当たった。こちらは試合開始時刻を早めに設定して、日帰り可能にすればいい。ところが、昨年の1・4は月曜日、今年の1・4は水曜日に当たり、試合開始時刻はやはり午後5時に設定せざるをえなかった。

そこが曜日のマジックなのである。結果的には、観客数云々を超える熱狂を生んだ今年の1・4東京ドームとなるのだが、それ以上に大きいのがテレビ朝日が当日深夜の浅い時間帯で『ワールドプロレスリング』の特番を組んだこと。深夜0時15分〜2時50分の2時間半という時間帯。テレ朝関係の仕事に関わらせてもらっている私からみても、この10年を振り返ってみたとき異例中の異例、ある意味“事件”ともいえる当日放送だった。

驚いたのは、そこだけではない。今回のドーム特番を某大手広告代理店が担当したという話を聞いたのだ。つまり、パブリシティからCMスポンサーを付けるところまで、すべてを某広告代理店が請け負ったということ。それがどれだけインパクトのあることかと言うと、サッカーのワールドカップ関連の試合、プロ野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)と同じような評価をされたということ。そう書くと多少大袈裟と思われるかもしれないのだが、つまりは「いまプロレスはキテいる。ビジネスになる」という評価が下されたということなのだ。

そこが数字だけでは計れない超ポジティブな要素。現代のドーム興行は、「何万人を動員したか?」よりも「テレビやネットメディアを通して、どれだけ世間と世界にとどいたのか?」がイチバン重要視される時代に入ったように思う。そこで今年の1・4がどれだけ凄まじい反響を呼んだのかを端的に示す事象がある。WWEのスパースターであるセス・ロリンズなど、世界的知名度をもつ現役レスラーたちやOBがドーム大会とメインのIWGPヘビー級選手権を絶賛するツイートを発信したばかりか、なんと瞬間的に1・4東京ドームに関するツイッターのハッシュタグが世界1にランキングされたのである。まさに、「It's Awesome!!」なのだ。

それでは、第0試合(午後4時10分スタート)から計算すると、興行終了時刻(午後9時50分頃)まで約5時半興行となった今年の1・4東京ドーム大会の試合そのものに触れてみたい。

まず、今大会に火を点けたのは第7試合のIWGPジュニアヘビー級選手権(KUSHIDAvs高橋ヒロム)。これに関してはだれも異論はないだろう。私自身も、「この2人がどこまでインパクトを残せるのか? あとに控えたヘビー級の3試合を食うことができるのか?」という観点からもっとも期待を寄せて見守っていた(※実際は放送席で解説していた)。

これが予想を一枚上まわった。ヒロムの強心臓とKUSHIDAのキラ―ぶりが見事に正面衝突したのだ。例えるなら、1990年代の新日ジュニア戦線で意地をぶつけ合った金本浩二vs大谷晋二郎の闘いを彷彿させた。

ジュニアというカテゴリーにおいて日本人同士でしか表現できない感情の激突。気が付くと、それがジュニアのタイトルマッチであることを忘れてしまう。金本vs大谷戦は、つねにヘビー、ジュニアをいう階級を超えた闘いを提供してみせた。

KUSHIDAvsヒロムには、それと似たような殺伐感が漂っていた。細かくいうなら、ヒロムは二度ほど大技をミスしている。しかし、それさえも逆に説得力を増して映った。

もしかしたら今回のドーム大会で、終わってみたら「IWGPジュニア戦がベストマッチだった」と言われるかも。そんな思いにも駆られた。

ところが、その後の試合が次々と今大会のベストマッチを更新してみせた。そこが、今年の1・4東京ドーム大会における最大の成功要因だった。第8試合のNEVER無差別級選手権(柴田勝頼vs後藤洋央紀)は、鉄板中の鉄板カード。好試合は必至だったのだが、過去の一騎打ちはすべて同門の同級生対決の色合いが強かった。今回、初めて敵対した環境に身を置き、そのうえで柴田は「あいつと同列に見ないでくれ!」と後藤の方向性と生きかたを完全否定している。

そこに、いつも以上の感情がほとばしったことは言うまでもないだろう。試合開始から決着のゴングが鳴るまでドームは沸きっ放し。ところが、試合後に不思議な現象がみられた。後藤が激闘を制しベルトを巻くと、それまでの観客のテンションが急降下していった。拍手はまばらで、つい先ほどまでの熱狂ぶりが嘘のような空気に包まれた。

柴田と後藤がそれぞれファンに提示してきた昨年1年間の重みの差なのだろう。ファンの正直すぎる反応がすべてだった。それを感じたか感じないかは、後藤しだいである。ただし、そこにあくまで鈍感でありつつづけるのも、また後藤らしさなのかな?と最近では思うようになった。とにかく、試合に敗れた柴田が珍しく堂々とコメントを残したということは、やはりプロレスラー後藤洋央紀からビンビンに感じるもの、伝わってくるものがあったということだろう。

このゴツゴツの闘いを受けてのセミファイナル、IWGPインターコンチネンタル選手権(内藤哲也vs棚橋弘至)は、長きにわたる2人だけの歴史を象徴するような、そしてこの2人にしか表現できないようなサイコロジーの闘いでもあった。ここで、一言で片づけるのは本当に辛い。本当に辛いのだが、素直に見たままを言葉で表現するなら、内藤の手のひらだった。攻めても受けても、内藤のほうに目がいった。そして、内藤はまた一枚腕を上げたなと感心させられた。

実際に、翌5日の後楽園ホール大会のメイン終了後に棚橋自身がそれを認めるような発言をしている。

「昨日のセミとメイン。4人のなかでやっぱり俺がいちばん動けていない。年々(ドーム大会が)盛り上がっていくなかで、棚橋はどんどん下がっていくという状況が、やっぱり悔しいですね。だから心を入れ替えて、合同練習で、練習生と1から始めるつもりで鍛えて、叩き直してきます」

ただし、私なりに棚橋らしさも受け止めた。最後に、内藤の旋回式デスティ―ノから正調デスティーノを食らって大の字に伸びた棚橋。負けたときは大の字。それもまたエースとしての大切な要素なのだと私は思っている。それができる男だからこそ、棚橋は選ばれしエースの座に着いたとも思うのだ。

極上のサイコロジー決戦。こんどはエースがMVP男を追う立場に変わった。まだまだ、両者の長きドラマには続編があることだろう。
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