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  • 2016.03.24

GK金沢克彦コラム #92

GK金沢コラム連載第92回!! 「3月21日という長い1日」

多極化するスターダム&仙女!

そして飯伏幸太がプロレスに戻ってきた!

「いやあ、トシだなあ~」と実感した1日、それがダブルヘッダーでプロレスを観戦・取材した21日のお話である。まず、当日正午からスターダムの後楽園ホール大会へ。これは15分ほど遅れていったので、到着したときにはステージ代わりのリング上で最後の歌が披露されている最中だった。全5曲の歌謡ショーのうち、最後の歌……スターダム・オールスターズによる熱唱のときだった。

 

 とくに、感想はない。それに言いづらいとき、書きづらいときには黙っているのが大人というもの(笑)。いろいろと聞こえたのはあくまで周囲の声であって、私は終盤の数分間しか聞いていないのだから、やっぱりよくわからないでいいのだ!

 

 ともかく、リング上へ。この日のすべてはメインに集約されていたし、私もメインを観たいがためにホールへ足を運んだのである。スターダムのタッグ最高峰の象徴、ゴッデス・オブ・スターダム選手権。王者は、長期政権でこの日、V9戦に臨むサンダ―ロック(紫雷イオ&岩谷麻優)。挑戦者チームはひょんなことから実現した宝城カイリと里村明衣子(センダイガールズ)の越境コンビ。昨年、宝城は里村と4度シングルで対戦し、2敗2引き分けという結果に終わっている。シングル最高峰の赤いベルト、ワールド・オブ・スターダム王座に関しては、1敗1分けでベルトを失っている。

 

 それでも、女子プロ界の横綱と4連戦も行なったのは、おそらく宝城だけだろう。この4連戦は間違いなく、宝城がレスラーとして生きていく中で大きな分岐点になったと思う。彼女のいい部分も未熟な部分も、すべてさらけ出されたといっていい。だから、そうそうだれにもできない貴重な体験をしたのである。
 

 そうかと思ったら、今度はタッグ結成。大会前日に1日だけ合同練習をしたという越境チーム。果たして、どうなることやら?

 

 ツーカーであり鉄壁といっていいタッグワークを誇るサンダ―ロック(と言っても、私は生ではほとんど試合を観たことがない)と、超即席の里村&宝城。おまけに、横綱といわれる里村ではあっても、ふだんあまりタッグマッチは行なわない。決まったタッグパートナーがいるわけでもない。まあ、見渡しても同格の選手がいないわけだから、これも致し方ないだろう。

 

 あえて、言うなら里村が唯一苦手としているのはタッグマッチなのかもしれない。そういう意味でも興味津々だった。そこで、結論からいうと、サンダーロックの目まぐるしさはやはり一級品だった。これは冗談抜きに、新日本名物のジュニア外国人タッグによる3WAY戦、4WAY戦に混じって参戦しても、かなりのレベルでやれてしまうのではないか、と感じてしまった。

 

 とくに、イオの思いきり溜めの効いたドロップキック、ミサイルキックは痛烈。こういう1発は男のリングでもあまり見かけない。最近のフィニッシュホールドであるムーンサルトプレスも強烈というしかない。えてして、ムーンサルトプレスという技は、ヒットした時点で身体が流れてしまったり、膝にウェートが乗ってしまい、相手のダメージに関しては「?」を感じることもある。

 

 ところが、イオの一発はもろに全ウェートを相手の身体に浴びせかける要領で落下する。見ていて、「こりゃ堪らんなあ」と思ってしまう。そこは、棚橋のハイフライフローと同じで、実際のダメ―ジにも見た目にも説得力がある。フィニッシュホールドというのは、そうでなくてはいけないのだ。

 

 一方の越境タッグは見ていて、ハラハラするぶんだけおもしろかった。宝城はサンダ―ロックの仕掛ける出足からハイスパートの攻防に慣れている。里村はイオとも岩谷ともシングルでは対戦していてもタッグとなると、また違った感覚だろうし、完全に相手の土俵である。そこで、里村がどういう試合を展開するかと思いきや、必死にハイスパートな攻防についていき、そのなかでも自分らしさを垣間見せるのだ。里村らしさとは、鋭い蹴りであったり、オーバーヘッドキックであったり、デスバレーボムなど。そこで、1発の重みの違いをときおり披露する。ただし、全体的にはサンダーロックのハイスピード&ハイスパートの流れに乗っているから、そこに即席ながらタッグプレーも交えながら必死に闘う里村が、なぜか私には健気に映ってしまった。

 

 横綱に健気と言ったら申しわけないのだが、これもまたプロレス。不慣れなタッグマッチに真剣に挑むこともまた横綱の使命という気がするし、そういう姿に「チャレンジする勇気」というようなものを感じた。極端に言うなら、タッグでもべつの闘い方はあったろうと思う。少し宝城を突き離して距離を取り、自分は自分のペースを崩さない。いわゆる貫録を見せる闘い方だ。だけど、里村はそれをやろうとはしなかった。あくまで同じ土俵、あくまでスターダムのリングでのタッグマッチらしく、メインらしく、タイトルマッチらしく……。そういう姿勢が観客に伝わるから、スターダムの3人娘がそろったメインのリングであるにも関わらず、その3人に劣ることのない“里村コール”が沸き起こるのだと思う。

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