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  • 2016.03.03

GK金沢克彦コラム #89

GK金沢コラム連載第89回!! 「まだまだトランキーロ?」

いよいよ開幕! 春の本場所『NEW JAPAN CUP』!

注目選手の意気込みは?

 本日(3日)、新日本プロレス・春の本場所『NEW JAPAN CUP 2016』(以下、NJC)が東京・大田区総合体育館で開幕する。昨年、“伏兵”と目されていた飯伏幸太が初出場・初優勝という快挙を達成してから、もう1年ちかく経ってしまった。いやはや、本当に1年が過ぎるのはおそろしく早いものだ。

 

 同時に、この1年で新日本マットの図式、流れもガラッと変わった。まず、ディフェンディング・チャンピオンとして位置づけされる飯伏は現在欠場中であり、先ごろDDT&新日本の2団体所属という立場から卒業し、飯伏プロレス研究所なるものを立ち揚げた。所属は飯伏ひとりなので、早い話がフリーランスとなった格好である。

 

 また、昨年の『NJC』トーナメントに参加しなかった3大王者は次のメンバー。IWGPヘビー級王者=AJスタイルズ、IWGPインターコンチネンタル王者=中邑真輔、NEVER無差別級王=石井智宏。これも1年経ってすべて入れ替わった。

 

 IWGP王者=オカダ・カズチカ、インターコンチ王者=ケニー・オメガ、NEVER王者=柴田勝頼。正直いって、IWGP王者=オカダ以外は予想だにしないメンツである。しかも、AJスタイルズと中邑真輔は新日本を離れ、WWEに活躍の場を求めた。激変もいいところ。

 

 ただし、AJ、中邑といった人気スターを失っても、2月シリーズの観客動員は落ちなかったし、この『NJC』の前売りチケットもよく売れていると聞く。不思議なものだなと思う。だけど、2大スターを失った新日本はこれまでの人気に胡坐をかいてボケっとしていたわけではないし、いままで以上のプロモーション活動に励んでいる様子もよく伝わってくる。

 当然、危機感は持っているし、新日本フロント、テレビ朝日関連、選手たちが三位一体となってパブリシティを行なっているのだ。

 

 さて、『NJC』はリーグ戦形式の『G1 CLIMAX』とは違って、トーナメント戦だから1発勝負のサドンデスとなる。だから、くじ運しだいというところもあって、大本命と目されていた選手が1回戦でコロリといかれるケースなども多々ある。まあ、これがおもしろいところでもあって、昨年の例でいくと、1回戦で棚橋弘至が矢野通の丸め込みにまんまと秒殺されている。

 

 それもまた『NJC』らしさであり、ファンの反応もおもしろい。棚橋ファンの女性は当然ショックを受けるし、なかには泣き出してしまう人もいたりする。一方で、どこかで期待していた大波乱を目の当たりに拍手喝采で大喜びする観客も少なくないのだ。

 

 今年の開幕戦で、棚橋はバッドラック・ファレと対戦する。しかも、メインイベント。こういう位置づけと、両者の試合運びからいって秒殺とかそういう試合にはなりそうもない。おそらく、ガッツリ真っ向勝負となるだろう。しかも、棚橋の気質からいくと、ファレのパワフルな攻撃を受けまくり、そのうえで勝ちにいくと思う。

 

 これが、かなりデンジャラスだったりする。ファレのパワーが、新日本マット随一であることに異論をはさむ余地はないだろう。ただし、BULLET CLUB(以下、BC)のオリジナルメンバーでありながら、どこかに優しさが見え隠れする。まあ、ヒールレスラーがリングを降りても荒らくれている時代ではない。

 

 そうではないけれど、あまりにファレは性格が優しすぎるのだ。もう、BCのジ・アンダーボスという呼称は捨ててほしい。彼の爆発力は全盛期のビッグバン・ベイダーを彷彿させるし、いま現在の外国人選手のメンバーで、唯一、怪物ガイジンになれる存在なのだ。

 

 ここ2年でAJという類まれな逸材がそのスキルの高さで外国人トップに躍り出たが、本来の新日本の歴史を見るとトップは怪物ばかり。アンドレ・ザ・ジャイアント、スタン・ハンセン、ブルーザー・ブロディ、バンバン・ビガロ、ベイダー、スコット・ノートンと列記していけば納得がいくだろう。ファレはそこに並ぶだけの力量を持っているのだ。ここは勝負がどう転ぼうとも、ファレの大化けに期待している。

 

 一方の棚橋は、自ら「大本命」と自負しているように、エースとしての真価が問われる。2・14新潟・長岡アオーレ大会の屈辱。中邑の遺産であるインターコンチのベルトを、ケニー・オメガに強奪された。ということは、インターコンチ奪回が当面の棚橋のテーマであり至上命令となるわけだ。

 

 そういえば、長岡でケニーに敗れ去った棚橋は、「ごめんな、中邑……」とひとことだけ言い残して去っている。ただし、長岡には試合とはまったくべつのドラマもあった。

 

 2・20後楽園ホールのバックステージでたまたま棚橋と出くわした。軽く雑談のつもりだったのに、棚橋は堰を切ったようにしゃべり始めた。だれかに聞いてほしかった。胸の内を話したかった。そんなふうに、私には見えた。

 

「大阪はいっぱいになったけど、長岡に関しては俺も心配だったんですよ。だけど超満員になって、お客さんの盛り上がりも凄くてね。俺、ほんと泣きましたよ」

 

 予想もしない言葉だった。少し驚いて、「へえー、また泣いちゃったんだ?」と私も合いの手を入れた。

 

「ええ、また泣きましたね。そのとき、思い出したんですよ。ちょうど5年前の仙台(サンプラザホール)のことを。ずっと集客が厳しかった仙台でIWGPをやって、ついに超満員になったでしょ? あきらめずにプロモーション活動してきてよかったなあって。あのときも泣きましたけど、なんか状況が似ているのかなあって。だけど、いまは俺だけじゃなくて、オカダだっているわけですからね」

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