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  • 2015.11.19

GK金沢克彦コラム #74

GK金沢コラム連載第74回!! 「検証・藤田vs諏訪魔」

大きな問題を残した藤田vs諏訪魔の初対決
藤田自身も気づいた大きなミスとは何か?

 1115両国国技館、天龍源一郎引退興行は、いろいろな意味で凄まじい大会となった。チケットは前売りの段階で完売。1万522人の超満員札止め。テレビ放送、動画配信にしても、BSスカパー!の生中継をはじめ、日テレG+、ニコ生、新日本プロレスワールド、全国規模での映画館でのライブ・ビューイングと、賑々しいことこのうえない。もし、これで地上波の生放送でもしていたら、猪木vsアリ戦を少しばかり思い出すような大騒ぎである。

 

 ミスタープロレス、偉大なり。そう言うしかないだろう。興行時間は正味4時間40分ほど。じつに長かった。ここで、ふとまったく関係のないワタクシ事を思い出し、愕然とした。来たる1122日、大阪ミナミのプロレスリングBAR『カウント2.99』にて、恒例のトークイベント(※5年連続5度目)である『GKのガチンコトーク』を開催するのだが、勢い余ってついに300分、つまり5時間トークイベントを決行するのだ。

 

 これほど長かった天龍引退興行より長時間しゃべり倒さなければいけないのか!? それに気づいて呆然としたしだい。まあ、「よし、来年は5時間いこうか!」と昨年の4時間イベント終了後に自ら宣言してしまったわけだから、身から出たサビというか、自分で播いた種である。しっかりとこなして天龍のように完全燃焼しなくてはいけない。と言いつつも、いま現在不安は増すばかりである(笑)。

 

 話を戻す。まず、オープニングがメチャクチャ格好よかった。日本を代表するギタリストで音楽プロデューサーの高中正義が登場し、自身の曲で、天龍の入場テーマ曲『サンダ―ストーム』を生演奏したのだ。しかも、途中で大ヒット曲の『ブルーラグ―ン』を挿入するアレンジまで披露するなど、最高にテンションの上がるオープニングシーン。

 

 まさか、学生時代に大ファンでLPレコード(レコードだよ、レコード!)も持っていた高中の生演奏を両国で聞けるとは……いきなり感動ものだった。

 

 さて、試合のほうは、超党派でありとあらゆるレスラーが集結しているわけだから、当然統合性など求められない。参加レスラーそれぞれが自分をしっかりアピールしていくから、そりゃあ試合順など関係なく長めの試合となる。

 

 そのなかで、メインイベントの天龍源一郎vsオカダ・カズチカ戦以外で最大の注目を集めていたのは、セミファイナルに組まれた藤田和之vs諏訪魔の因縁の初対決だった。しかも、タッグパートナーを務めるのが、大日本プロレス、ストロングBJの2枚看板である関本大介と岡林裕二。近年まれに見る予測不能の好カードである。

 

 ところが、このタッグマッチは内容的に問題を残した。主役であるはずの藤田と諏訪魔が試合後にブーイングを浴び、さらに『ダイニッポン・コール』が沸き起こるという珍事。まあ珍事というより、民衆の声というか、結果論として現代プロレスファンならそうするのが当たり前なのかもしれないし、実際に関本と岡林は相変わらず素晴らしかった。そこで、よくよく考えてみると、最初から予想できた事態なのかもしれない。

 

 関本と岡林は、4カ月前の大日本7・20両国大会で、今年のベストバウト候補に挙げられるような規格外の肉弾戦を展開しており、プロレスファンから完全に認知されている。

 

 その2人と比較すると、退団者が続出する政情不安定な全日本プロレスの暴走専務こと諏訪魔と、既存のプロレス団体にあってジャンルの鬼っ子のような存在であるIGFを主戦場とする藤田には、いまいちファンからの信頼度が足りない。

 

 この2人が過去どんなに輝かしい実績を誇っていようとも、天龍引退興行という特別にして特殊な舞台では、2人の遺恨とか、今後の展望などは、おろらく「どうでもいいこと」となってしまうのだろう。その場で観たもの、起こったことがすべてである。それがファンの素直な気持ちということになるのだ。

 

 では、このタッグマッチがなぜそういう結果を招いたのか、もう少し突っ込んで検証してみたい。まず、いまとなっては遅いのだが、私自身、藤田に「岡林vs関本戦(7・20両国)を観ておいたほうがいいよ」と薦めたことをいまは後悔している。動画でその試合を観た藤田は、「素晴らしいですね。あれは、長州さんが大喜びしそうなプロレスです。夜中にプロレス中継を観ていて、たまに眠くなってしまうこともある自分が釘付けになって最後まで観戦しましたからねえ」と驚嘆するほどに感心していた。

 

 ここで藤田に、関本と岡林に対する印象が植え付けられてしまった。大胆不敵でありながら、実際には人のいい藤田。年齢的にも、プロレスキャリアでも自分が上まわっていながら、戦前からこの2人へのリスペクトが生まれたのだ。

 

 藤田に先入観を持たせてしまったことが失敗だった。藤田は大日本の2人に合わせようとしてしまったのだ。本来、藤田のプロレスはほとんどアドリブである。本能と感情の赴くままに相手に対していく。それなのに、ふだんは無縁なスピーディーでスイングしたプロレスに自分から踏み込んでいった。

 

 その結果、攻め込まれたり、受け身をとりまくったり……藤田らしくないスタイルで闘ってしまった。もともと持ち技は少ないし、少ない持ち技で自分を表現するのが藤田である。それなのに、流れに合わせようとしたから、受け身もとるし、手詰まりになったのかコブラツイストを二度も仕掛けるなど、同じシーンまで作ってしまった。

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