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  • 2015.08.27

GK金沢克彦コラム #62

GK金沢コラム連載第62回!! 「棚橋弘至vsHARASHIMA」

つねにハッピーエンドで終わるDDT両国大会で波風を立てた棚橋の真意は?

 今年も夏の終わりに“両国ピーターパン”がやってきた。真夏の『G1 CLIMAX』が終わると、次はDDTの両国大会で夏を締め括るというのが日本のプロレス界の恒例行事となった感もある。その証拠に前売りチケットは完売となったし、来年の3・21両国国技館大会は、入場ステージで会場の6分の1をつぶすことなく、新日本プロレスばりの全面使用で開催することを早くも発表した。

 

 23日に開催された今大会の正式名称は、『両国ピーターパン2015~DDTより愛をこめて~』。超ロングランの5時間興行、ダークマッチもふくめると全10戦。最後は苦労人の坂口征夫がついにKO-D王座を初奪取する感動のエンディング。「42年生きてきて、いちばん嬉しい出来事です」の言葉に、私たちまでジーンときてしまった。これほど本音と実感のこもった一言もないからだ。

 

 酒呑童子のアニキである王者・KUDOとの試合は、ひたすら蹴り合い、ときどきサブミッションという攻防の繰り返し。それでも、1発1発に魂のこもったシバキ合いだから、決して飽きることがない。キャリア豊富なKUDOはもっと変化をつけることもできたろうが、征夫の気持ちに応えるかのように真正面から打撃で勝負する。

 

 最後は、神の右膝2連発。有無を言わせぬ決着。ベルトとともに賞金200万円の小切手パネルを贈呈された征夫はそれをヒザでたたき割り3分割。同志であるKUDO、マサ高梨と山分けした。

 

 このシーンなどは、1996年の『ヤングライオン杯』優勝戦を思い出す。永田裕志を破って優勝した石澤常光(のちのケンド―・カシン)は、賞金パネルを半分にたたき割ると、引き揚げかけていた永田を呼び戻し、「永田、これは半分おまえのものだ!」と言って、パネルの半分を渡したのだ。もしかしたら、いや間違いなく征夫はあのシーンを鮮烈に憶えていて、思わず同じ行動に出たのではないだろうか? それほど、彼はプロレスが好きだったし、ずうっとプロレスラーになりたかったし、夢を諦めきれなかったし、遠回りしたけど、夢を掴んだのだ。気がつくと、42歳になっていた坂口征夫。本当に、オヤジさんに似てきた。その面構えは“荒鷲”坂口征二にソックリである。

 

 そういえば、G1中に後楽園ホールに来場していた坂口さん(新日本プロレス相談役)に、「DDTの両国は観戦に行くんですか?」と行かないことを知りつつ聞いてみた(笑)。

 

「そんなよぉー、オヤジがいまさら会場まで行くなんてみっともないことしないって(苦笑)。テレビで観てるよ」
 

 そう言いつつも、長男の征夫が夢に一歩近づいた状況を喜んでいるのは明白。顔はほころんでいた。熱血漢の九州男児、坂口さんは息子の試合と晴れ姿をどんな思いで見守っていたのだろうか? こんど、会場で会ったら聞いてみよう。「なんかよ、試合終わってからずいぶん殊勝なコメントしてたよな、クワッハハハハハ!」と豪快に笑いそうな気がする。

 

 たしかに、殊勝なコメントだった。ただし、征夫の目はときどき潤んでいたし、最後にベルト姿の撮影をリクエストされたとき、ファイティングポーズだけではなく、左の人差し指で右手首の上をさすポーズも見せた。そこにはDDTのロゴマークのタトゥ―が入っているのだ。その行為にまたジーンときた。団体への感謝の気持ちを行動で示したのだ。

 彼の総合デビュー戦をディファ有明で見とどけた、そしてプロレスラ―として団体の“テッペン”に立つ姿も観ることができた。いいものを見させてもらったなあと思う。

 

 さて、問題の棚橋弘至vsHARASHIMA戦に関しては最後に考えてみたい。ここはもちろん後半部分で触れないことには、有料サイトの意味がないってば(笑)。

 

 では試合順からいって、タレントのLiLiCoのデビュー戦となった第2試合の時間差タッグバトルロイヤル。これは入場順が上手くハマったせいか、最後はLiLiCo&宮武俊vsアジャ・コング&大石真翔の純粋タッグマッチの様相となった。そういえば一般マスコミ、ワイドショーかなにかの番組も駆け付けている。ここで申し訳ないのだが、ふだんテレビのバラエティ番組などをまったく観ない私は、LiLiCoという人がどういうキャラのタレントさんなのかを知らない。

 

 とにかく彼女はヒール志向のようで、目の部分にペイントを施してきた。身長はあるし、表情はいい。ちょっと異常で悪そうな表情の作り方は、ザ・エスぺランサ―に似ていた(※よっ、総統! 懐かしい)。プロレスラーといえるのかどうかは危ういところだが、唯一アジャのボディスラムの受け身をとったところに練習の成果が見えた。まあ、身長があるし……えっ、このLiLiCoさんて45歳なんだ!? あまり無理をしないほうがいいかもしれない。

 

 第5試合には注目の天龍源一郎が登場。赤井沙希、高木三四郎とのトリオで、石川修司&樋口和貞&里村明衣子と対戦。この6人タッグは、天龍vs里村の顔合わせがすべてのインパクトを持っていった。天龍が先発と見るや、このチャンスを逃すかと先発で飛び出す里村。身長差は約30㎝。大人と子ども、岩石と小石、ゴールデンレトリバーと豆柴ぐらいの体格差がある。

 

 ただし、里村はもっと大きな男とも対峙した経験がある。4年前、鈴木みのるが起案した東日本大震災のためのチャリティープロレス大会で高山善廣と闘っているのだ。ちなみにカードは、鈴木&里村vs高山&栗原あゆみだった。あのときも颯爽と高山に向かって行った里村だったが、今回も真正面から天龍とロックアップ。エルボー、ミドルキックと打ちこんでいくが、天龍は微動だにせず、グ―パンチ連打から顔面をボコンボコンと蹴り上げていく。もう観ているほうが、痛くて堪らない気持ちになってくる。

 

 なぜに、男子に対してもやらないキツくてエグい攻撃を女子には見せるのか? そんな疑問も沸いてくるが、戦前に里村が「神取さんとやったときのような本気の天龍さんを体験してみたい」と言った以上、そういう天龍で応えなければ天龍の名がすたるということだろう。

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