• このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2015.08.13

GK金沢克彦コラム #60

GK金沢コラム連載第60回!! 「新日本プロレスが後楽園ホールに帰ってきたぞ~!!」

本間朋晃はリアルロッキー!

「新日本プロレスが後楽園ホールに帰ってきたぞ~!!」。棚橋ふうにそう叫びたい。『G1 CLIMAX 25』(以下、『G1』)の4週間、全19大会という日程のうち、まず3週間弱地方をまわり、13戦目の8・8横浜大会でようやく首都圏へ凱旋(?)。翌9日からホームの後楽園ホールで、中1日空けての3連戦へ突入した。1738人、1742人、1736人。これって、なんの数字がわかるだろうか? 9、1112日の後楽園ホーの観客動員数である。もちろん、すべて“超満員札止め”のチケット完売。いくら夏休み中とはいっても、1112日は平日。だけど、『G1』という名前に対するファンの食い付きぶりは、やはりいつも以上のようだ。

 

 それに、リング上も充実していた。肉体的な怪我人が多いだけではなく、地方では控え室周辺の空気が重苦しいこともたびたびあったと聞いている。しかし、こうやって都内に戻ってくると、不思議と選手たちの顔にも表情が浮かぶようになってくる。やはり自宅に戻ってきた安心感、通い慣れた後楽園ホールにやってくる安心感。そういうものが作用して、精神的な健康状態がよくなるのかもしれない。

 

 だけど、こんな前例のないハードな日程で、しかも2ブロックが交代で公式戦を行ない、公式戦のないブロックはタッグで次の公式戦へ向けた前哨戦を闘うという、斬新で不慣れな試みにチャレンジしながら、選手はよくがんばっているなあと感心するばかり。

 

 なにがイチバン凄いかって、前哨戦のタッグマッチでも、手抜きなしどころか全力でやり合っていること。まあ、フェノメナ―ルワンこと世界のAJスタイルズが前哨戦タッグでも本気モードで来るのだから、そこで楽したいなどと考える選手はだれもいないのだろう。

 

 では、この3連戦で気になったこと、唸った試合、選手などについて書いてみたい。べつに、点数が何点でだれが生き残ったとか、そういう話はしないでおく。そういうのは文章で表すものではなく、星取表を見れば一目瞭然なのだ。9日は、やはりメインに尽きるだろう。鉄板と言われる後藤洋央紀vs石井智宏。過去、適度な時間を空けては何度も抗争を展開してきた。インターコンチのタイトルマッチあり、春の『NEW JAPAN CUP』あり、NEVER無差別級戦あり、とくにベルトや称号はからんでいないがなぜか抗争ありと、とにかく「これでもか!?」と闘ってきた。戦績は後藤が圧倒している。

 

 私の記憶によれば、石井がシングルで後藤を破ったのは1回か2回程度しかないだろう。そこには明らかに格の違いが存在していた。ところが、この抗争を眺めながら私がいつも思っていたことはひとつ。プロレスラーとしての総合的な力量では明らかに石井が上だということ。だから、むしろ石井と抗争しながら後藤は成長していっているように見えたのだ。というか、これは間違いないと思う。

 

 ところが、ここ2~3年、石井が堂々と『G1』にエントリーされ、NEVER王座の価値観を上げていくにつれ格差は縮まった。もはや「格の勝利」とか「将来性の勝利」は通用しなくなったのだ。

 

 同格に近くなった2人の攻防はさらにエスカレートしていった。そのなかでも、周囲が「昭和プロレスの体現者」とか、「武骨な男」とイメージを決めつけている石井の器用さと上手さが爆発した。初めて掟破りの牛殺しを後藤に見舞ったのだが、そのフォームといい、角度といいパーフェクト。そのうえ、後藤お得意の時間差ロープワークを自ら何度も仕掛けていく。

 

 本当に器用だし、運動神経がいいし、センスがあるし、やろうと思えば何でもできてしまう。受け身のほうも相変わらず思いっきり受け切ってからバンプをとる。だけど、基本はチョップ、エルボー、ショルダータックル、ラリアットなどのぶちかまし技だから、観客にはそちらのイメージをちゃんと植え付けてみせるのだ。これがあるから一筋縄ではいかないスターである中邑真輔とオカダ・カズチカの両雄は石井に尊敬の念を抱くのである。

 

 結果的に、石井は昇天・改に敗れた。負けたときはノーコメント。これをいま貫いているのは柴田勝頼と石井だけ。そこに、しっかりと昭和臭い余韻も残していくわけである。

 

 12日は番狂わせの連続だったが、もっとも光っていたのは天山広吉vs柴田勝頼戦だった。この2人には知る人ぞ知る因縁あり。まだ若手だった柴田が当時のヒール軍団、魔界倶楽部に参入し、マスク姿でセコンドへ。天山をイスで痛打したことがある。この一撃の当たりどころが悪く、天山は手痛いダメージを受けた。次の瞬間、惨劇が勃発。マスクマンが柴田だと見抜いた天山は、「このシバタごときが!」が吠えると、イスを手に場外で柴田をメッタ打ち。周囲の制止を振り切って、柴田をノックアウトしてしまった。

 

 ふだん、あれほど温厚で怒ったところなど見たことがないのに、リングに上がると、ごくたまにブチ切れる天山。あの頑丈な身体、大きな顔面で大暴れすると、だれも止められないのだ。もちろん、いま柴田に対して引きずっているものはないが、もしかしたら柴田には多少なるともトラウマが残っているのかもしれない。この人は、ヤバイ! だから柴田が柴田らしく弾ける前に、天山が弾けた。アナコンダバスターの体勢から、柴田の後頭部へ頭突きの乱れ打ち。そこからバスターを決めてアナコンダマックス。鬼気迫る表情で勝ち名乗りを受けた。バックステージの天山の顔はリング上より怖かった。

「あのクソガキ、ただじゃ済まないぞ!」と怒りを顕にする。柴田には触れない、もう内藤哲也のことだけ。かつて付人だった内藤が、やさぐれキャラに変身して「あいつはもう終わっているから」と天山をこき下ろした。その一言に対する本気の怒りだった。天山を怒らしてはいけない。かつて試合中に、確信犯的に鈴木みのるの顔面に頭突きを打ち込んで鼻骨を折ってしまったこともあるのだ。その天山、小島聡、永田裕志と毎年V戦線に食い込んできた第3世代の戦績が振るわない。いや、惨憺たるもの。しかし、彼らには現トップの世代を食ってしまう力量が備わっているのだ。
>