• このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2015.06.04

GK金沢克彦コラム #50

GK金沢コラム連載第50回!! 「長与千種とふつうに会話をした日」

ここ最近のプロレス界で起きた出来事に思いを巡らせるGK

 男女問わずこれだけ団体が多く、選手数も多いといろいろなことが起こる。誠心会館の青柳政司館長が先月9日、オートバイでツーリング中に車に衝突されて、意識不明の状態で病院に運ばれた。一命はとりとめたものの激突の際の衝撃で右膝下を30カ所以上も粉砕骨折。6月1日をもっての引退を表明した。

 

 青柳館長はハーレーダビットソンを愛用していたという。数年前、原付きバイクに乗っていた天山広吉がバスと衝突し負傷するという事故に遭っているが、ここ数年、人身事故ではないものの、私が知っているかぎりでもバイク走行中のアクシデントで怪我を負った選手を数名知っている。人身事故ではないから、ニュースにはならない。それらのケースは人の飛び出しを避けてのものが多いからだ。

 

 レスラーは常人とは鍛え方が違うし、受身をとることができる。だから、人が突然飛び出してきたり、車が急に車線変更して衝突しそうになったとき、咄嗟にバイクを倒し衝突を避け路上で受身をとるのだ。もう、これは本能的なものだろう。相手に怪我をさせない、 自分も怪我をしないために必死に受身をとる。

 

それでもタフなレスラーでなければ、命を落としかねないような状況にあった話などを何回か聞いた。「さすが、レスラーだな!」と感心すると同時に、「バイクは危険だなあ」という思いがふつふつと沸いてくる。これは趣味だし規制できるものではないのだが、たとえばプロ野球の選手などがオートバイに乗っているという話は聞いたことがない。おそらく、球団側が禁止事項としているからではないのか? 昔からプロスポーツ選手がベンツなどの高級外国車の大型セダンに乗るのは、羽振りがいいからばかりではなくて、もしものときに身を守るためでもあるのだ。

 

 今回の館長の事故で、少しバイクの利用に関して考えてみてもいいのではないか? こと個人的に館長に関して言うなら、命が無事でよかったというのが本音。先だって取材した大仁田厚は館長のプロデビュー戦の相手だったし、大仁田vs青柳のプロレスvs空手、しかも日本人同士による初の異種格闘技戦は文句なしの名勝負だった。この一戦によって、大仁田の名前がふたたび世に出たし、それまで無名の空手家だった青柳政司はプロレス&格闘技シーンに飛び出し、同時にこれも無名だった誠心会館はいちやく極真会館に並ぶほどの知名度を得た。

 

 とくに、館長が新日本マットに進出し、齊藤彰俊が新日本に喧嘩を売るカタチで乗り込んできたとき、誠心会館の名前は轟き渡った。また、個人的にも人間性のいい青柳館長とはずいぶん仲よくさせてもらった。もうリングに立つことはできないのだろうが、命が無事だったことを奇跡だと思い、持ち前の明るい性格で生き抜いていってほしいと思う。

 

 女子プロでも、衝撃というか、ガッカリさせられる報道があった。スターダムの2・22後楽園ホール大会のメインイベント、ワールド・オブ・スターダム選手権で、挑戦者の安川惡斗をボコボコの病院送りにして、王座剥奪、無期限出場停止処分中だった世Ⅳ虎が引退を決意。来たる6・14後楽園ホールで、引退の挨拶を行なうというのだ。謹慎中の世Ⅳ虎に他の選手たちが連絡を取ろうとしても、まったくつながらない。そういう話を個人レベルでは数名の選手、関係者から聞いていた。

 

 結論は最悪の引退。いまとなっては、誰が悪いとか蒸し返す問題でもないと思う。世Ⅳ虎と安川、どちらが仕掛けたのかも判然としない。ただし、試合にならないと判断した世Ⅳ虎が最終的には安川を戦闘不能にして試合を終わらせたという格好。喧嘩両成敗という言葉があるが、プロレスの試合でもトラブル、アクシデントが起こればやはり双方に非があると言うしかないだろう。だから、改めて棚橋弘至の言った「2人とも未熟だった」がいちばん適切な表現となるのだ。

 

 これは、かの小川直也vs橋本真也戦(1999年1・4東京ドーム)にも当てはまる。アントニオ猪木に洗脳されて(?)、一方的に仕掛けた小川はプロとしてあまりに未熟だった。仕掛けられた橋本は堪ったものではない。ただし、日ごろの不摂生からコンディション不足で、いざとなったときに対処できなかったという点は、言い訳できない。技術的に未熟だったことも浮き彫りにされてしまった。責任の重さは違うにしても、やはり両方に原因はあるのだ。

 

 そこで世Ⅳ虎がここまで精神的に追い込まれ引退(※スターダム以外のリングに上がる気はないようだから廃業である)という結論に達したのは、想像するにまだ大人の対処ができないからではないか? つまり、まだ21歳の女の子なのだ。いや、女の子ではなくても、21歳という年齢は一般的にまだ子どもだろう。それがプロレス雑誌はもとより、一般誌からテレビのワイドショーにいたるまで、女子プロ凄惨マッチの加害者として大々的に取り上げられ、顔と名前が知れ渡ってしまった。

>