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  • 2015.05.21

GK金沢克彦コラム #48

GK金沢コラム連載第48回!! 「『ゴング』はイケてる」

競合誌があるから、頭を使うし、

身体も使うし、知恵を絞るし、努力もする

 なんか『ゴング』ってイケてねぇー!? 最近、さらにそう思うようになってきた。『ゴング』復刊の話が持ち上がったのは、たしか2012年の暮れだったと思う。正しくは、復刊話ではなくて、私が某出版社の超善人(編集者)であるW氏から「『ゴング』の商標権が更新されずに宙に浮いてますよ」という事実を聞いたのが、その時期。私は早速、その話をペールワンズ代表の井上崇宏氏に電話して教えた。井上氏が何年も前から、「他からの仕事を請け負うだけじゃなくて、自分の媒体を持ちたいですねえ!」と口癖のように言っていたことを憶えていたからだ。

 

 実際、ペールワンズは『KAMINOGE』という書籍媒体をスタートさせていた。これが当たって、いまも『KAMINOGE』は月刊でコンスタントな数字を残しているようだし、選手、関係者、マニアックなファンには『KAMINOGE』好きが多い。これは隙間産業と言っていい。隙間を狙って生き残ったし、他に競争相手がいないから成功している。なんせ表紙に、とくにプロレスとは関係ないと思われるミュージシャンや女優が登場したりするのだ。

 

 隙間といっても、彼(彼女)らは著名なスターだし、ビジュアルがいいからそれはそれでOKなのだろう。いくら著名人でもビジュアルに問題があると表紙としては到底無理である。ずいぶん昔に、『週刊プロレス(以下、『週プロ』)』が、超メジャーな人物だけれど、ビジュアル的にちょっとあり得ないだろうという人を表紙にもってきたときは、おったまげたものだ(笑)。

 

 それを思い出すと、「それはまだ無理があるんじゃないか?」と思われる宝城カイリ(スターダム)を表紙にしたり、過去に何度か華名を表紙にしたのはアリかなと思う。それが個人の趣味だろうとなんだって構わない。だって競合誌がないのだから、なにをやってもいいのだ。競合誌のない独占市場だからやりにくいこともあるだろうが、独占市場だからやれることもいっぱいある。

 

 とくに、いまプロレス界にはひと昔前のように理不尽なまでのクレームをつけてくる団体関係者がいなくなった。理不尽というか、もう常軌を逸したクレームというか、いちゃもんというか、言いがかりをつけてくる人が過去には存在したのだ。

 

 いまはクレームがあったとしても、たとえば棚橋弘至のように業界全体を考えたときに、彼の責任感などからくる問題提起といった趣である。

 

 先ほど書いたことに関する補足にもなるが、例の世Ⅳ虎の顔面殴打事件が起こったとき、『週プロ』はボコボコにやられたほうの安川惡斗を表紙にした。それが棚橋の怒りを買ったわけだが、翌週には懲りることなく世Ⅳ虎の謝罪会見を表紙にもってきた。それがまたさらに棚橋の怒りを増幅させたわけだが、温厚なタナをこれだけムッとさせるのだから、それはそれで大したものかもしれない。

 

 ただし、それから1カ月余、世間を騒がせたスターダムの再スタートの日となった3・29後楽園ホールで、世Ⅳ虎の返上した最高峰のベルトを争奪するトーナメントで優勝し、初めて王者となったのがスターダム3期生の宝城カイリ。もともとルックスがいいから人気は絶大だったが、キャリア面、技術面でまだ多少危なっかしさの残る選手である。

 

 その宝城がベルトを巻いた姿をピンで堂々と週プロは表紙にしたのである。これが個人的趣味なら、まさにビックリ仰天としか言いようがないのだが、日本マット界のエースともいうべき棚橋のクレームにも腰が引けることなく、安川、世Ⅳ虎、宝城という連続ドラマのスターダム3部作として表紙を作ったのなら、これは素晴らしい判断だと思う。

 

 自分たちが事件を大きく煽ったからには、自分らで落とし前をつけて、ケツを拭いて、ストーリーに一応のエンドマークを付ける。そういうことになる。もし、そういう考えのもとに、この3選手を、とくに一般ファンの間ではまだ無名に近い宝城を表紙に持ってきたというなら、これは喝采ものだろう。素直にそう思うのだ。

 

 だったら、この時代に未だもし『週刊ゴング』が健在で、競合誌として張り合っていたら、そしてワタクシ金沢が編集長だったとしたら、という前提で少し考えてみたい。私だったら、どれも表紙はあり得ないだろう。

 

 なぜかと言ったら、私が第一に考えるのはまずこの本が売れるかどうか? そこに尽きる。過去、自分が『週刊ゴング』の編集長を務めていた5年と9カ月、私は一度も女子プロ系の表紙を作ったことがない。というのも、その時期、『レディース・ゴング』という女子プロレス専門誌が毎月刊行されていたこともあるし、女子プロで売れるという確信を持ったことがなかったから。

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