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  • 2014.07.17

[追悼企画]さようなら、春一番さん。 再録・ゆでたまご・嶋田隆司×春一番(中編) 「そもそも『1、2、3、ダーッ!』を流行らせたのは春ちゃんやからな!」(嶋田)


前編はこちら

※かつて携帯向け格闘技総合サイト『スカパー! バトルLIFE!!』(現在はサービス休止)にて連載をしていた、『キン肉マン』の作者・ゆでたまご嶋田隆司先生がホスト役を務める対談コーナー『肉處 しま田』の第3回目のゲストとして登場したのが春一番さんだった。お二人はプロレスを通じて出会った旧知の仲であり、今回、春さんの追悼企画として、嶋田先生にこのテキストを『ビッグファイト』にて改めて取り上げることをご快諾いただき、ここに再録させていただきました。(写真:佐久間立秋)


「集中治療室で猪木さんのケータイが鳴っちゃったんですよ。で、またその電話に出ちゃうんですよ、猪木さん!」(春)

——じゃあ、すべては乾癬から始まってるんですね。

 そうですね。

——なんで乾癬になっちゃったんですか?

 原因はあれですよ、『お笑いウルトラクイズ』でウイリー・ウイリアムスと闘ったときにカレー粉プールに落とされて、全身カレー粉まみれになったんですよ。で、まだ身体のカレー粉を完全に落としきってないときに、『金粉ダジャレマラソン』っていうのがあったんで、金粉を頭から被って。それがきっかけで全身の皮膚がブワーってなっちゃったんですよ……。

嶋田 カレー粉と金粉かあ……。

——1カ月ぐらい39〜40度の高熱が出続けたというのも怖い話ですね。

 ええ。で、やっと原因がわかったんですけど、CTを撮ったら肺に影があって、それが「ガンかもしれない」とかいろいろ言われて。一番大きい部分に針を刺して、チューブで膿を吸い取ったんですね。

嶋田 肺に針を刺すんですか。

 ええ。でも、やっぱり髪の毛みたいな細い針を使うんで、膿ってドロドロしてるじゃないですか? だから、なかなかうまく引けないんですよね。それをどんどん太いチューブにして3回やり直したんですよ。で、「ばい菌を殺す薬がまた腎臓に負担がかかるんで、それを使うと一生人工透析になっちゃうから」とか言われて、3回目の手術をしたあとにICU(集中治療室)に入ったんですね。その頃のことはもう幻覚ばっかり見てて、あんまり憶えてないんですけど……。

——それはいわゆる危篤状態なんですか?

 ここから先はカミさんに聞いた話なんですけど、意識はあって目は開けてるらしいんですよ。だけど、ずうっと入院してて、熱が出て、ご飯も食べてないし、いろんな検査とかもあって、毎日毎日血を取ったりレントゲンを撮ったりとかしてるんですよ。

嶋田 身体が相当弱りますよね。

 弱ってるんですよね。だから3回目の手術に耐えられないんじゃないかって言われて。「もう助けられない」みたいなことを医者に言われたらしいんです。で、「誰か会わせたい人がいたら、いまのうちに……」ってカミさんが言われて、猪木さんに電話したら来てくれたんですよ。

嶋田 お願いしたら、猪木さんが来てくれた。

 そしたら、ドカーンって数値も全部標準に戻っちゃって!(笑)。

嶋田 きましたね(笑)。

——このあたりのディテールを細かくしておきたいんですが、通常、集中治療室っていうのは面会謝絶ですよね?

 ええ。でもそのときは「死ぬかもしれない」じゃなくて「死にます」って言われたらしいんですよ。で、最後にどうしてもボクに会わせたいおきたい人っていうことで猪木さんが来てくれたんで、特別に入れてもらったんですよ。

嶋田 紙の帽子みたいなのを被って?

 ええ。これもカミさんに聞いたんですけど、猪木さんが使い捨てのエプロンをして、靴を履き替えて、手を消毒してマスクして、給食当番みたいな帽子を被って。

——猪木さんが入って来られたときは意識はあるんですか?

 そこだけ憶えてるんですよ! カミさんに「今日はスペシャルゲストが来るから」とか言われて、「もういいよ、なんの検査だよ……?」とか、そんなことを言ったらしいんですよね。そしたら「猪木さんが来るんだよ」って言うんで、「こんなとこに来るわけねえじゃんよ……」って答えたら、「ホントだよ」って言うんで、じゃあそうなのかなと思って、そこで俺、看護婦さんを集めて前説をしたらしいんですよ。

嶋田 無意識の状態で前説を(笑)。なんて?

 「いまから凄いビッグな人が来るけど、ミーハーな気分で写真とかサインとかねだるなよ!」って言ったらしいんですよ。

嶋田 「くれぐれも失礼のないように」と(笑)。

 ええ。

嶋田 それで、猪木さんが来た。

 来てくれて、10分ぐらいずっと手を握っててくれて……。

嶋田 何を話しました?

 シモネタばっかり喋ってましたね。「かわいい看護婦さんはいるかい?」「11階にいましたねえ」「なんだ、11人もいるのか!」って、会話が噛み合ってないんですよ。でも、2人とも同じとこで笑ってるんですよね。

嶋田 その会話も全部憶えてるわけですか。

 そうですね。で、最後に「元気になったら一杯やろうぜ。今度来るときは一升瓶持ってくるから」って。しかもICUなのに猪木さんのケータイが鳴っちゃって。

嶋田 電源を切ってなかったんですか(笑)。

 普通、切るじゃないですか。で、またその電話に出ちゃうんですよ、猪木さん! あんなの許されるのアントンだけですよ(笑)。

嶋田 誰も注意できない(笑)。

 さすがに誰も何も言えなかったですねえ。

——それで猪木さんが帰られて、数値がバーッとよくなったっていうのは、どのタイミングからですか?

 もう次の日に! ICUって1日3回しか面会できないんですね。10分ぐらいずつ、朝昼晩って。で、最初カミさんは猪木さんが来ることをボクには言わないで、突然会わせて驚かそうって思ってたらしいんですけど、もうボクが頭がおかしくなって幻覚を見て、壁に喋りかけたりとか、ヘンなことばっかりやってるんで、これは猪木さんが来るって先に言っとかなかったら、猪木さんにせっかく来てもらってもワケがわからないんじゃないかなと思ったらしくて、直前に教えてくれたんですよ。で、猪木さんにも「会長、せっかく来てくださったんですけど、本人はワケのわからないことばっかり言ってると思うんですけど、気にしないで流して適当に喋ってあげてください」って言って。そんな状態ですよ。なのに、次の日から普通にシャキッと喋れるようになって……。

嶋田 猪木さんが来てくれた瞬間っていうのはどうだったの?

 心電図とか、肺の膿を出すチューブとか、管だらけなのに、猪木さんが来たらバッと起き上がって「会長! 会長!」って(笑)。しかも俺、「会長、喝入れてください!」って言ったらしいんですよ。
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