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  • 2015.02.19

GK金沢克彦コラム #35

GK金沢コラム連載第35回!! 「プロレスはやっぱりナマ物」

2日間でDDTのピンからキリまで体感した桜庭

 先週はまったく毛色の違うビッグイベント2大会を堪能させてもらった。まず、新日本プロレスの2・14仙台サンプラザホール大会。予想通りと言うか、当然のごとくと言うかチケットは完売の札止め状態。いきなり裏話になってしまうが、10日前に仙台市内のホテルを予約しようとネットで当たってみたところ、どこもかしこも満杯。「そんなに遠方から新日本を見に来るファンがいるのか!?」と驚嘆し、なんとかテレビ朝日さんが押えていた予備の部屋を譲ってもらい事なきを得た。現地でタクシーの運転手さんに聞いてみたところ、1315日の3日連続で福山雅治のコンサートがあると判明。福山と永田サンというイケメン二大巨頭がそろい踏みとあっては、仙台のホテルも満室に決まっているって!

 

 全10戦、3時間半のロングラン興行となった仙台大会だが、私なりの発見がいくつもあった。休憩前に組まれたロブ・コンウェイvs天山広吉のNWA世界ヘビー級選手権は、天山が掟破りのエゴトリップからムーンサルトプレスでNWA世界を初戴冠。試合後、「『ゴング』の表紙お願いします!」と、とんでもない発言を残している(笑)。その表紙はあり得ないけれど、やはり天山の底力を存分に見せてもらった。

 

 天山広吉というレスラーは昔から外国人レスラーと名勝負を生み出すことができる。その要因は彼の“間”にあると思う。1年半にわたる海外修行(主にヨーロッパ)で身に付けたガイジン選手との闘い方に関して、天山の右に出るものは今でもなかなかいない。かつて、米国ナッシュビルでWCWのPPVビッグショ―『スターケード』が開催されたとき、新日本軍団の一員として参戦した天山は、“マッチョマン”ランディ・サべ―ジと対戦したが、この一戦がWCW関係者からもベストマッチとして高評価を得たことがある。私も同行取材したのだが、文句なく同大会のベストマッチだと思った。あの辛口で知られる天山の師匠、ジョー大剛さんがわざわざホテルまで国際電話をかけてきて、「広吉、よくやった!」と手放しで褒めたほどなのだ。

 天山の上手さと、彼のキャラからくるハッピーエンド感が会場全体を包みこむ、素晴らしい試合だった。

 

 休憩明けには、注目のタッグマッチ(内藤哲也&飯伏幸太vs矢野通&桜庭和志)が実現し、飯伏と桜庭が初遭遇。これも見応えがあった。打撃の間合いで構える両者。飯伏はキックボクシング経験者であり、桜庭は総合を代表するストライカー。本物同士が打撃の間合いで対峙すると、緊張感が違うのだ。密着して桜庭が腕関節を狙いにいくと、素早くエスケープする飯伏。桜庭が飯伏を光らせているのか、飯伏が桜庭を光らせているのか? これは両方なのだろう。この2人だから、この2人にしか出せない空気に包まれたのだと思う。じつはこの絡みに関しては、またあとで触れることになる。

 

 セミに組まれたNEVER無差別級選手権は、王者・真壁刀義がインフルエンザに感染したため無念の欠場。代わって本間朋晃が抜擢を受けて、石井智宏との王座決定戦に臨んだ。大会前、真壁の欠場が告げられると、客席から大きな落胆の声が響いてきた。ところが、代わって本間の出場が発表されると大歓声へと一変。本当に、「エ―ッ!」から「ウォ―!!」だから、わかりやすい。ファンからすれば、そこまで本間の認知度が上がったということだ。これを私たち関係者に当てはめてみると、その反応はファンと同じなのだが、理由が違ってくる。

 

 率直に言ってしまうと、真壁と石井はリズムが違うので、思ったほど好勝負にならないのだ。両者とも直線型に見えて、インサイドワークに長けている。それなのに、なぜかイマイチ手が合わないというか、もうひとつ噛み合わない。プロレスというのは本当に不思議な競技である。それに反比例するかのごとく、石井vs本間はガッチリと噛み合い一線を超えた。「ここまでやるか!」というほどのレベルまで達してしまった。明らかに天龍を意識したWARスペシャルを繰り出すなど石井の気合も半端ではなかったが、本間の成長ぶりも想像以上。ある意味、私は新日本プロレスの向こう側を感じてしまった。つまり、この試合は1990年代全日本の“四天王プロレス”を彷彿させたのだ。もっと言うなら、この日の石井に川田利明がもろにダブって見えた。

 

 川田というレスラーは、私が個人的にもっとも評価するプロレスの天才、達人である。攻めても受けても素晴らしい。強さ、痛み、非情さなど、プロレスラーとして必要なものをもっとも表現できるレスラーだと思うからだ。石井を見ていると、その川田を思い出した。石井智宏という男、ついにその域まで達したのかなと実感したしだい。

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