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  • 2015.01.29

GK金沢克彦コラム #32

GK金沢コラム連載第32回!! 「プロレス界にも“言葉狩り”!?」

 
少し細かすぎる最近のプロレス界……

 1・23発売の『ゴング』創刊号で、かつて『週刊ゴング』の不定期連載として好評だった“ヒューマン・ドキュメント・ストーリー”を復活させてみた。本来であれば、当時の担当者(フリーライター)にやってもらいたかったのだが、いま現在ほかの仕事が忙しすぎてとても手がまわらないという。そこで仕方なくというわけではないが、改めて取材しなくても書ける人物とネタを用意して、私が自ら担当することにした。

 

 主役は石井智宏。モノクロ7ページで、文字数は9,895字。本当ならもう少し書きたかったのだが、これ以上増やすと写真を入れるスペースがかなり狭まってしまうので、抑えることにした。

 

 取材なしで書くというと、「どういうことなの?」と思う人もいるかもしれないが、要は私が過去に書いてきた石井に関するコラムなり、特集をまとめて加筆・修正しつつ1本のドキュメントにしたということだ。これがもし改めて取材したとしたら、いまの石井の言葉からドキュメントを書くことは難しいというか、おそらく無理だろう。

 

 武骨でガチガチの昭和プロレス最後の体現者と言われている石井だから、そこで自分のキャラとイメージを守ることが大切。多くを語らずに、リングで語る男が石井であり、それが彼の展開する凄まじい試合と短めのコメントへの重みをさらに増していくのだ。

 

 おそらく、今回のドキュメントに関して、「なぜプライベートでの話を書くのか?」といった疑問をぶつけてくる選手や関係者もいるかもしれない。それに関する答えは簡単。石井だから書ける――それだけのこと。

 

 先ほど触れたように、今回の内容は、2004年12月発売『週刊ゴング』1051号の“疾風怒涛!GK激場”と、2013年10月発売の新日本プロレスブックス『CHAOSコンプリートブック』(イーストプレス)の“CHAOSの特攻野郎 石井智宏という生き様”に寄稿した内容を引用しつつ、そこに私のブログに記載してきた石井の話を加えて、1本のドキュメントに仕上げている。

 

 石井がここまでトップ戦線に上がってきた以上、もう次はない。おそらく、最後の石井物語になるだろう。もし、この特集にクレームをつけられる者がいるとしたら、それは石井本人しかいない。私はそう思っている。

 

 もうひとつ言うなら、小説とドキュメントの違いこそあれ、こういう物語こそ、直木賞作家・西可奈子さんが言うところの「シャベルですくったときに、こぼれおちたものを表現する」手法だと思っている。ヒューマンドラマ、人間の本質というのはそこに隠れているのだ。

 

 なぜ、当コラムで“ヒューマン・ドキュメント・ストーリー”の話から振ったかと言うと、最近のプロレス界は選手もフロント関係者も少し細かすぎると感じているから。これはテレビ放送にも言える。テレビ放送においては、CS放送はかなり規制が弛いのだが、やはり地上波放送のほうは規制が厳しくなってくる。ただ、そこもひとつ間違えると“言葉狩り”の世界に入ってしまう可能性がある。

 

 たとえば、昨年の『G1 CLIMAX』開催中に、高橋裕二郎と少し雑談をした。そのとき彼から興味深いセリフを聞いた。

 

「最近、試合のある前日は飲まないようにしているんですよ。やっぱり、体調が違ってきますからねえ」

 

 あの裕二郎の言葉だから説得力は抜群だった。実際、G1開催中の裕二郎は金的攻撃などは相変わらずとして、女性ダンサーをはべらかしたり、マイクでのお下劣な挑発行為などはいっさいしなかった。当たり前のことだが、一戦一戦にしっかり集中している真面目な裕二郎を感じた。ファンも同じ思いを抱いたろうし、そこにG1の過酷さを見るのは当然のこと。

 

 私は裕二郎の公式戦の解説で、「あの裕二郎でさえ、試合の前日にお酒を飲まなくなったと言ってますからね」と言った。たしか、ブログにもそう一文を記載したような気がする。

 

 それに関して、あるトップ選手からクレームがついた。

 

「雑談で話したことを言っちゃったらダメじゃないですか。それに裕二郎のイメージがあるんですから」

 

 まあクレームというより、その選手が新日本全体を見ていて、考えている証拠でもある。ただ、私の考え方は違うということ。G1こそ、1年の中でもっとも過酷さがリアルにクッキリと現れるシリーズ。G1中に飲んだくれている選手などいるわけがない。その中でも“遊び人”のキャラで売っている裕二郎でさえ、目の色を変えて取り組んでいるというのは、もっともG1のシビアさを象徴する話だと思うのだ。

 

 これが反対に、G1中にも関わらず、裕二郎がオネエチャンを引き連れてリングインしたとしたら、それはそれで最高におもしろい。反対に、「このG1というもっとも過酷な闘いの連戦にあって、裕二郎だけは相変わらずマイペースですね。この男もある意味、レベルが違いますよ!」と言えてしまうわけだ。こういう場合、裕二郎との雑談はもちろん、胸にしまっておくことになる。それが私の感覚だし、この29年プロレスマスコミとして飯を食ってきた自分の判断には自信がある。

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